ランサムウェア被害で延期のイズミ本決算がついに発表、西友九州事業取得のねらいは?
西友九州事業を承継し重点エリアの「へそ」形成
M&A関連では、24年1月に大分県で事業展開するサンライフと株式譲渡契約を締結し、24年5月に子会社化。これによりイズミにとって空白地帯であった大分県内における存在感を増すとともに、物流・販促面での効率化を図りたい考えだ。
さらに24年4月には西友と吸収分割契約を締結し、西友の友九州事業を承継すると発表している。今回の事業承継でイズミが西友から承継する店舗は69店。うち62店は福岡県内の店舗となっている。
「福岡県には2000年代に多くの店舗を出店して以降、ほとんど出店できていなかった。ドミナント戦略の対象エリアのうち、福岡は最大のマーケットであり、かつ熊本と広島の中間点に位置する。その福岡の中心部に店舗が集中している西友九州事業を承継することで、当社の“へそ”ができる。商品力強化や物流、販促の効率化が期待でき、今後のSM事業の展開が大きく変わるだろう」(山西社長)
事業承継の効力が発生する24年8月には、同社の店舗は265店、うち九州地区店舗は157店となる。「西友さんの九州事業は、当社の重点地域である福岡や熊本をはじめ、長崎、佐賀、大分にも店舗展開している。今回、売上高が約970億円(22年12月期実績)にのぼる事業を承継することになる。今後の大きな戦略のひとつとして楽しみだ」と、山西社長。2030年長期ビジョンで掲げる300店舗体制の実現、そして営業収益1兆円(収益認識に関する会計基準等を適用前)に向けて基礎を固めた格好だ。
商品戦略では、総菜・生鮮食品の自社製造ブランド「zehi(ぜひ)」の付加価値を訴求するとともに、低価格への対応も強化する。具体的には、セブン&アイ・ホールディングス(東京都)グループの低価格PB「ザ・プライス」の導入や、ニチリウの共同仕入れへの再加盟によるスケールメリット活用、自社PBの開発力強化が挙げられる。
24年度は、ランサムウェア被害に起因する客数の回復に向けた価格政策を展開するとともに、既存店の競争力強化、出店およびM&A効果の最大化により、収益増をめざす。なお、24年度の業績予想は、ランサムウェア被害からの回復見通しなどの合理的な算定を待って公表するとしている。