中国、約7割の小売業がオンラインチャネル拡大へ、食品スーパーはサプライチェーン強化に進む
新型コロナウイルスの感染は世界各国で拡大の一途を辿っており、消費者行動にも顕著な変化が出ている。今回の記事では、前回から引き続き、感染拡大に際して中国の小売業界に見られた変化と「ポスト・コロナ(新しい日常の段階)」を見据えた動きに関してお届けする。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大は、中国の小売業界、特に実店舗に大きな影響を及ぼした。しかし、一部の小売企業では十分に準備ができており、迅速に対応して危機をチャンスに変えたと言える。
感染の拡大をきっかけに中国の小売業界は新たな視点からビジネスを見直しており、業界全体において長期的なビジネスチャンスが模索されている。ニールセンでは、感染拡大の初期段階から中国小売業界の動向をモニターしている。
中国の主要小売企業と1万以上のスーパーマーケットなどのデータにもとづくニールセンの最新調査では、感染拡大収束後にもたらされる変化とチャンスだけでなく、感染拡大に対応する最中に小売企業が直面したさまざまな課題も浮き彫りになっている。
ニールセン中国 社長 ジャスティン・サージェントは「新型コロナウイルスの感染拡大が中国の小売業界にとって大きな試練であることは間違いありません。しかし、中国の小売企業は総じて、この非常に不安定な環境において優れた柔軟性と回復力を見せています。多くの小売企業がリソースを迅速に整え、急激に変化する状況に機敏に対応し、ビジネス戦略の見直しを行いました。この危機からはビジネスチャンスも生まれており、新型コロナウイルスの感染拡大が小売業界の発展を加速させるだろうとの見方もあります」と述べている。
中国の小売企業が直面した課題と対応
調査では、春節の間に状況が二極化したことが分かっている。調査対象の小売企業のうち42%が昨年の同時期と比較して売上が減少したと回答、このうち29%は売上が大幅に減少したとしている。対照的に、小売企業の44%が売上の増加を報告し、28%が著しい成長を遂げたとしている。
業種を問わず、大手のハイパーマーケットやスーパーマーケットの多くにおいて売上は良好で、トップ小売企業は強力なサプライチェーンにより業績は好調だと回答。一方、中小企業、特にコンビニエンスストアの売上が減少していることも分かっている。また、パーソナルケアと化粧品に特化した店舗(日本で言うドラッグストア)やベビー用品店のいくつかも大きな影響を受けているが、その一方で一部のベビー用品店は、消費者の需要に応えるべくオンラインショッピングやソーシャルメディアを積極的に活用し大幅な成長を生み出している。
ニールセンの調査では、小売企業は、特定のカテゴリーの在庫不足、物流と流通における支障、配達スタッフの不足の主に3つの課題に直面したことが明らかになっている。
課題に直面しながらも、一部の小売企業は、リソースを迅速に配分して対応策を積極的に打ち出し、危機を機会に変えるための一連の対策を実施した。具体的には、サプライチェーン関係企業の柔軟な対応、商品供給の効率性の確保、従業員への配慮と懸念の共有、スタッフの合理的な配置、店舗営業時間の調整、オンラインチャネル・オンラインコミュニティを通じたビジネスの拡大、消費者の信頼と好印象を高めるための企業ブラディングの強化などが挙げられる。