日本政府、景気判断を大幅下方修正、6年9カ月ぶり「回復」削除
[東京 26日 ロイター] – 政府は26日、3月の月例経済報告で景気の総括判断を「新型コロナウイルス感染症の影響により足元で大幅に下押しされており、厳しい状況にある」とし、大幅に下方修正した。各国の感染拡大防止策を受けた経済活動の収縮を反映。2013年7月以来6年9カ月ぶりに「回復」の文言が削除され、安倍政権の金看板ともいえる景気回復が途切れた格好だ。
項目別では全14項目のうち7つを下方修正。「消費」や「設備投資」などのほか、政権が景気回復の証としてきた「雇用」も判断を引き下げた。7項目もの下方修正は、個別項目の景気判断を公表し始めた01年2月以来初めて。
2月の景気判断は「輸出が弱含む中で、製造業を中心に弱さが一段増した状態が続いているものの、緩やかに回復している」だった。
リーマンと震災合わせた影響の可能性
内閣府の2月景気ウオッチャー調査では、判断指数は現状・先行きともに東日本大震災時やリーマン・ショック時の水準近くまで急低下した。
内閣府幹部は今回の、新型コロナウイルスの感染拡大に起因する経済的ショックについて「震災とリーマンを合わせた大きさになるかもしれない」と指摘している。
先行きについても「感染症の影響による厳しい状況が続く」とし、「感染症が内外経済をさらに下振れさせるリスクに十分注意する必要がある」と指摘。また、株価暴落を受けて「金融資本市場の変動などの影響を注視する必要がある」と警戒感を示した。
求人が急減、雇用環境の悪化は不可避
政府は昨年以降、生産・輸出の悪化が続いても、人手不足を背景にした良好な雇用環境をベースに景気は緩やかな回復を続けていると強調してきた。
しかし、今回の報告では、経済の急激な収縮により雇用環境の悪化は不可避と判断した。ハローワークの有効求人数は昨年10月以降、前年割れが続いているが、その減少幅が1月の7.3%から、2月12.4%、3月16.1%と急拡大している点を懸念している。「雇用情勢」の判断は、2月の「改善している」から「改善してきたが、感染症の影響がみられる」に下方修正した。
他の項目では、「個人消費」を「持ち直している」から「感染症の影響により、このところ弱い動きとなっている」に引き下げた。3月上旬に各新幹線の利用者数が前年比5割程度減少したことや、沖縄・九州・近畿・南関東・北海道の宿泊施設の稼働率が5割程度減少しこと、パブ・居酒屋、百貨店の売り上げ減少などを反映させた。
「設備投資」は「おおむね横ばい」とし、2月時点での「緩やかな増加傾向にあるものの、一部に弱さがみられる」から引き下げた。構築物投資の減少などを反映した。
「輸入」は、中国からの部品供給の減少を踏まえ、「弱含んでいる」から「減少している」に引き下げた。
「企業収益」は「製造業を中心に弱含んでいる」と判断し、2月時点での「高い水準にあるものの」との文言を切り取った。東京商工リサーチの調査で、2月の売上高が7割の企業で前年割れとなり、2割の企業では20%も以上落ち込んでいることを重視した。
「業況判断」も、従来の「引き続き慎重さが増している」から「感染症の影響により、悪化している」に引き下げた。
輸出、感染症でさらなる下押しも
「輸出」、「生産」、「住宅建設」、「貿易・サービス収支」、「倒産件数」判断は据え置いた。
もっとも輸出は、弱含みが継続しており、訪日客の消費を含め感染症が下押ししていると警戒している。
住宅建設も、借家に下げ止まり感が感じられるものの持ち家の減少が止まらず、「弱含んでいる」とした。