値上げ時代、スーパーマーケットが取るべき価格戦略とそのための仕組みづくりとは何か?
価格を安く見せる工夫も
このように、さまざまな取り組みで安さを実現する仕組みをつくることができて初めて、EDLPをはじめとする売場での価格訴求や販促に取り組むことが可能となる。お客の価格に対する感度が高まるなか、売場で効果的に安さを表現することの重要性はますます高まっている。
値上げが続くなか、首都圏を中心に小型DSを展開するビッグ・エー(東京都/三浦弘社長)は、一律に値上げするのではなく、価格感度の高さやブランドスイッチの起こりやすさなどを踏まえ、カテゴリーごとに役割を明確にしたうえで細かな価格設定を行っている。価格優位性に応じて商品を5つに分類し、バスケットプライスでSMより2割安くすることをめざしている(詳しくは44~45ページ参照)。その一方でDSの「安かろう悪かろう」というイメージを払拭するため、洗練された店舗開発にも取り組んでいる。
埼玉県を本拠とするSM企業マミーマート(岩崎裕文社長)の生鮮強化型ローコスト業態「生鮮市場TOP」では、生鮮食品の価格を100g当たりの2ケタ売価で大きく表示しているほか、日配品ではバンドル販売でお得感を演出するなど、商品を安く見せる工夫を行っている。
そのほか、イトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)は、コモディティ商品だけでなく、認知度は高くないものの高品質の商品や銘店の商品を軸とした販促を展開。商品の価値を伝えたうえで、品質の高さに対する値ごろ感を打ち出すことで効果を上げている。
もちろん、価格だけがSMの価値ではない。商品の味や品質、サービスレベルの向上など、ほかにもSMが追求すべき価値はたくさんある。しかし、値上げが続く一方で収入も上がらない状況では、そもそも価格が安くなければ消費者に選ばれにくくなってしまうのも現実だ。
さらに、ロピア(神奈川県/高木勇輔代表)やオーケー(同/二宮涼太郎社長)のように、SMながら価格訴求力の強い業態が大きな支持を獲得している一方、生鮮強化に力を入れるトライアルのようなDSもあるなど、価格とそれ以外の価値を両立しようとする動きもみられる。こうした状況下では、品質の追求だけで生き残っていくことは難しくなっていくだろう。
本特集では、低価格を実現するための仕組みづくりに取り組む企業8社を取材・調査した。自社の価格戦略を構築するうえで、ぜひ本特集を参考にしてほしい。
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