ユニクロと東レとのサステナブルな関係から生まれたリサイクルダウン
リサイクルダウン開発のきっかけ
「私たちがユニクロと取り組む一番の目的は、新しい素材を提案できる場だからです」(荒木氏)
そう語る荒木氏は、2004年に東レに入社、営業部で企業ユニフォームのテキスタイル素材を販売していたが、2013年に自ら希望してGO部に異動した。ユニクロが世界一を目指すということを聞いて、そういう会社と一緒に仕事してみたいと思ったのが希望の動機だ。
ユニクロのリサイクルダウンの特徴は、一般的な「リサイクルダウン」という素材を専門業者から仕入れているのではなく、ユニクロの店頭でお客様から回収した自社のダウン製品から作られている、とうことにある。これもまた、ユニクロが自社製品の循環のサイクルを作る試みの一つなのである。
「ユニクロのダウンでリサイクルダウンを作りませんか、というのは、もともと我々からユニクロに提案したのです。ダウンは素晴らしい素材です。我々は合繊メーカーで、合成繊維のポリエステルなどで中綿と呼ばれるようなものを開発していますが、軽さ、温かさ、着心地、手入れのしやすさなどを考え合わせると、いまだかつてダウンを超えたものはできていません。ただ、天然の羽毛には限りがあります。そこで、この有限な資源をリサイクルして、より安定的にお客様にお届けすることに価値があるのではないかと考えて、『ダウンのリサイクルを始めませんか』と提案しました」(荒木氏)
合繊メーカーの東レから、ダウンをリサイクルする提案があったことには、ユニクロの柳井社長も驚いてはいたものの、その場で「是非やってください。お願いします」と言われたという。
その提案があったのが2019年の4月、そこからユニクロ社内で部署横断のプロジェクトがスタートし、5カ月後の2019年9月から店頭でのダウン回収が始まった。そして2021年秋、初めてリサイクルダウンの製品が発売された。
部署横断のリサイクルダウンプロジェクト
ちょうどその時期、荒木氏はユニクロの生産部に出向していた。しかし、東レにとってもユニクロにとってもリサイクルダウンを製品化するのは初めてのことである。東レからの要望により、ユニクロ社内に部署横断のリサイクルダウンプロジェクトチームが立ち上がる。
関係する部署は、MD(マーチャンダイザー)、生産部、品質チーム、デザイナー、パタンナー、マーケティング部、営業部、法務部、サステナビリティ部など、多岐に渡った。
「苦労したことと言えば、全部です。とにかく、東レもユニクロも、経験したことのない仕事ですから。我々の普段の仕事の範囲は、『糸を作って、生地にして、服にする』というところまでです。ですが、そのプロジェクトでは、マーケティングや倉庫の賃料、輸送のコスト計算などのシミュレーションも、ユニクロの皆さんと一緒にやらせていただきました。それまで自分のやってきた仕事とだいぶ違う領域でしたので、かなり苦労しましたが、もっとも印象に残る仕事になりました」(荒木氏)
「特に難しいのは、どれくらいのダウン製品を回収できるか、というところです。ダウンのアウターはユニクロの中でも比較的高価ですし、それほど頻繁に買い替えることがないためか、回収量が多くはありません。そこは大きな課題の一つで、どういったことができるかをユニクロと話し合っています」(荒木氏)
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