事業そのものをサステナブルに ユニクロのマーチャンダイザーが希望した異動先
事業活動そのものをサステナブルに
ファストファッションとは、流行の最先端をいち早く取り入れた、低価格のファッションのことで、製品の多くは大量生産、大量廃棄され、その産業自体がサステナビリティとは真逆にあるように言われている。
ユニクロも、ファストファッションの代表格と称されることも多い。しかし、ユニクロは、実際、ファストファッションと言えるのだろうか?
ファストファッションと言われる他のブランドでは、世界のファッショントレンドを追いかけて、多品種を小ロットずつ作り、“売り切りご免”で売り切っていく。それに対し、ユニクロの商品開発は1年以上前から始まり、絞り込んだアイテムを大量に作り込む。作る商品もシンプルで定番的なデザインが多く、世界のファッショントレンドよりも、購入者の声を反映して、同じ商品の素材やパターンを改善しながら何年も作り続けている。
「低価格」というくくりで一緒にグルーピングされることが多いが、そもそも商品のMD自体が、他のファストファッションブランドとは大きく違うのだ。
「僕たちが一番やってはいけないと考えているのは、誰も欲しいと思わないような無駄なものを作って、売れ残って廃棄すること。できることなら、お客様が本当に欲しいものだけを作って、それが全部売れて、なおかつ買っていただいたお客様には長く着てもらえるというのが理想です」(岡田氏)
そのため、ユニクロは大胆なシステム投資により、ここ数年で需要計画、商品計画の精度を大幅に改善した。かつてエクセルを駆使していた頃とは格段の差だ。無駄なものを作らないのは環境のためであるのと同時に、当然利益にもつながっているはずだ。
「僕たちは、作ったものが最終的にごみにならないよう、寄付、リサイクル、リユースなどの受け皿も作っています。けっして、作りっぱなし、売りっぱなしにしないということです。僕たちの考えるサステナビリティは、事業の一部でやることではなく、事業活動自体をサステナブルにしていくということなのです」(岡田氏)
企業の社会貢献室やCSR部といった部署は、事業経験のないメンバーだけで組織されていることが多い。そういった企業のサステナビリティ活動は、本業で利益を追求し、その利益の一部を使って、事業とは別のところで社会に還元する、という構図だ。しかし、本業の事業自体をサステナブルにしていく、と考えるとき、事業側の経験者が果たす役割は大きい。マーチャンダイザーという商品のコストや生産量を司る仕事をしてきた岡田氏の経験は、サステナビリティ部の業務の急速な拡大にマッチし、さらに加速したのではないかと思う。
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