ユニクロのサステナビリティ活動22年の歩みと未来 #2 目指すのは新たな事業モデル

北沢 みさ (MK Commerce&Communication代表)
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最も難易度が高いと感じていることは

 このバタフライ型の循環を成立させる中で、最も難しいのはどこなのか。

 「まず左側にある自社のサプライチェーンのループで難しいのは、環境配慮型の素材や、リサイクル素材の使用割合を50%使っていくという目標(※)ですね。これは技術的には可能なんです。ただし、出来上がった服が本当にお客様にとっての幸せにつながっているかどうか、が大切です。それによって価格が高くなってしまったり、重くなったり、伸縮性がなくなったり、着心地が悪くなってしまったら意味がない。あくまでもお客様に満足していただける価格、品質、デザインをクリアした上で、環境に配慮した素材を50%の商品に採用していこうということですから。最終的に判断されるのはお客様であり、難易度が高いと思っています」(柳井康治氏)
※「長期的なサステナビリティ目標とアクションプラン」において、ファーストリテイリンググループ全体で、2030年度までに全使用素材の約50%をリサイクル素材などに切り替えることを目標として掲げている。

 「もう1つ、右側にあるリユース、リサイクルのループは自分たちだけでは実現できなくて、技術的なパートナーが必要です。そのためには、我々がこういうことを考えてやっているよ、ということをもっと知っていただくようにしないといけないですね」(柳井康治氏)

バタフライ図と壇上の柳井康治氏
記者発表会での柳井康治氏

LifeWearとは、循環する服

 ユニクロは自社の作る服を既存のカテゴリーと区別して、独自に「LifeWear」という言葉で表現している。先ほどのバタフライ図では、向かって左側にある自社のサプライチェーンのループには「LifeWearを生み出す」、右側にあるリユース、リサイクルのループには「LifeWearを活かし続ける」と書かれている。

 「Life」と「Wear」という平易な言葉を組み合わせてあるが、もちろんこれは造語だ。ユニクロのホームページでは「LifeWearとは、あらゆる人の生活を、より豊かにするための服」と説明されているが、つまり、このように循環する服という意味もあるのだろう。単なるカジュアルウェアでもなければ、使い捨てのファストファッションなどではない、新しい循環の中で生み出される服。しかもこの循環は、服自体に耐久性が備わっていなければ成立しない。

ユニクロの服はもともとサステナブル

 「もともとユニクロの服は長く着られる服、つまりサステナブルなんです。高品質で丈夫なだけでなく、翌シーズンも、その次の年も着られるベーシックでシンプルなデザインであることも、長く愛用いただける理由です。サステナビリティという言葉がなかっただけで、フィロソフィーとか思想のレベルではずいぶん昔からそういう考え方を持ち続けていました。たとえば創業当初は、コンセプトとして『ユニセックス/ノンエイジ』を掲げていましたが、今の言葉で言ったらジェンダーレスやダイバーシティ&インクルージョンなんでしょうね」(柳井康治氏)

 数年前から、ユニクロのテレビコマーシャルでも、この「LifeWear」という言葉を聞くようになった。そこに「循環する服」という意味が込められていたことに気づくと、今までとはまた違う意味で、ユニクロの服を着てみたいという気持ちになった。

 「第2回 ユニクロのサステナビリティ活動22年の歩みと未来 #3 『ドラえもん サステナモード』の誕生」は6月4日(月)掲載。ファーストリテイリンググループ執行役員の遠藤真廣氏に、『ドラえもん サステナモード』について取材した。

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記事執筆者

北沢 みさ / MK Commerce&Communication代表

東京都出身、日本橋在住。早稲田大学第一文学部卒業。
メーカーのマーケティング担当、TV局のプロデューサーの経験を経て、
1999年大手SPA企業に入社しマーケティング・PRを12年、EC・WEBマーケティングを8年担当し、ブランドの急成長に寄与。
2018年に独立後は、30年に渡る実務経験を活かし、小売・アパレル業界を中心に複数企業のアドバイザーとして、マーケティングおよびEC業務を支援中。

 

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