アインHD、フランフラン買収で変わる?株主総会の争点とは
フランフラン買収、4つのポイントと争点
今回のフランフラン買収のポイントを、上記の文脈に照らして見直すと以下の点が指摘できるでしょう。
- アインHDの第2の柱となりつつあるリテール事業と顧客面などで親和性が高く、商品政策(MD)、プライベートブランド(PB)開発、共同出店、新業態開発などのポテンシャルがある。戦略的適合性はありそうだ
- 買収金額が500億円であり、ちょうどネットキャッシュを使い切ることになる。現経営陣にとっては株主との間で最重要論点だったネットキャッシュ問題に一定の解答を示したことになる。
- しかし開示資料によれば フランフランの業績は2021年8月期から2023年8月期にかけて増収ながら減益トレンドである(経常利益の推移は2022年8月期34億円、2023年8月期24億円)。
- 過去3期の当期純利益の平均値は19億円(最大値23億円)、2023年8月期の純資産75億円、過去3期のROE平均概算は24%である。これを踏まえると、買収価格500億円はPER26倍(過去3期平均)、PBR7倍となる。また1店舗あたり買収額は3.1億円となる。株主の視線はこの経済合理性に向かう。
本件はオアシスの株主提案を抱える株主総会直前に発表されています。現経営陣は、絶妙なタイミングで”ネットキャッシュを成長戦略に活用する”ひとつの解答を示したと思います。
一方、株主の立場からすれば、先に触れたように本件の経済合理性に加えて、「他にも優先すべき案件があったのではないか」と問いただしたいはずです。
本件後の株価の反応はネガティブでした。フランフラン買収を発表した当日の終値比で、翌日は9.26%株価が下落したからです。これも総会前の株主の投票行動に影響を与えます。株式総会を控え、アインHDの経営陣が改めて本件の成功へのコミット、および本件後においても成長投資を最大化するコミットを行うことが待たれます。総会の結果には大いに注目したいと思います。オアシスの反応も気がかりです。
最後になりますが、大局的に見ればこうした動きは資本市場の健全性が高まっていることの証左に思われます。インフレ経済のもとで企業が現預金をかかえることが好ましくないという認識が企業経営陣に浸透していること、アクティビストのプレゼンスが経営陣をして成長戦略を遂行するよう駆り立てているからです。
プロフィール
椎名則夫(しいな・のりお)
都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、
米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、
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