世界最強のユニクロ5兆円に自信のワケ!ファストリ23年8月期決算徹底分析
明確になったユニクロの戦略
海外事業は30%の成長
正直に言って私は、今日までファーストリテイリングが掲げる「LifeWear(ライフウエア)」の意味がわからなかった。しかし、上記二つのやり取りで、同社のブランディングの方向性がハッキリとした輪郭をもち、そして、この軸こそ同社をして最高益を更新させしめ、世界の頂点へと誘うドライバーだということが理解できた。某経済紙は「ファストリ3兆円」と、煽るような題名で忙しいわれわれの目を錯覚させたが、3兆円は来期のことだ。今年の同社の売上収益は2兆7665億円である。
まずは、ファーストリテイリングの業績の全体像から解説していきたい。
以下が、ファーストリテイリングの23年8月期通期業績である。
まず、決算書が得意ではない人向けに解説すると、「売上総利益」は「営業粗利」と同じ意味で、総利益率の逆数が原価率である。売上収益に占める販管費の割合はお約束の「30%台(38.1%、対前期比1ポイント改善)」だ。あれだけデカい巨大な店舗を世界の一等地に次々に出しても、それを上回る売上を「あの価格」(中間価格帯)で成し遂げているのだ。販管費というのは、その事業に必要な費用を総じてまとめたモノだ。営業費用と考えてもらってよい。そして、粗利から販管費を引いたものが営業利益となる。これが、その会社の事業の強さを表す最重要指標である。投資銀行が見るデューディリジェンスで用いられるEBITDAとは、この「営業利益」から、減価償却費を引いた、「現金を稼ぐ力」である。蛇足ながらここまでのPLのロジックはしっかり押さえておくと役に立つだろう。
さらに注目すべきは、円安局面でのこれだけの為替差益である。全ての通貨においてプラスに働いているが、これまでの定説は、「アパレルは輸入産業だから円安でダメージが出る」というものだった。しかし、事業収益(売上)で最も成長しているのは海外であり、この海外でのユニクロ事業の3183億円の増収が、そのまま弱い円に助けられて利益を押し上げているのである。
「アパレルは輸入産業」など誰が決めたのか。ファーストリテイリングは「世界で勝てない企業はやがて死が待っている」と、幾度もの困難を経て、今では縮小する日本市場より海外の方で売上・利益も出す国際企業になったのである。私が、「ブランドで競争する技術」で提唱したグローバルエリア・ポートフォリオの如く、円高、円安に関係なく為替を味方につけるグローバル企業になったのだ。「常識を変え、世界を変える」は決して単なる標語ではなかったということになる。
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