ユニクロの新ライン、「ユニクロ:C」が天下統一ブランドとなる理由
+J との違いはブランドを誰が持つか
日本は、人口が不可逆的に減少し2056年には1億人を割り、この流れは国の運営の構造的なものでありデジタル化と移民政策で乗り切る以外に道はない。本稿は政治に関して自身の立場を明言するものではないため、その原因や影響などについては各人の想像に任せるが、日本は、例えばこれからアパレル産業で30年間働く新入社員が狙うマーケットではないことだけは明らかだ。これは、「過去十分に与えられた食料」が、いまから15年後には、「一枚のピザを皆でわける時代」になるからである。また、日本企業は構造的になかなか新陳代謝をしないため、新しい産業、人が前線にでてきて活躍することも想像しがたい。
数年前からユニクロは、とくに夏のTシャツに付加価値をつけるべく、様々なプリントを施した商品、また、世界的有名デザイナーとのコラボレーションを強めブランド力を内在化しようとしてきた。このシリーズでも再三とりあげた「+J」は、ドイツの有名デザイナー ジル・サンダー氏とのコラボレーションで、私はとても好きだったのだが、おもしろい現れ方をし、また、興味深い幕引きを演じた。あくまでも、予想ではあるが先週にご紹介したように、本来付加価値というものはタンジブル(目に見える、物理的なモノ)から、インタンジブル(目に見えない版権など)に移行していくのであろう。たとえば伊藤忠商事などが、いまだに繊維産業から多くの利益を得ているのは、「ブラマ」(ブランドマーケティングの業界用語)を日本でもっとも早く導入したからだった。
ユニクロ:Cは、「イギリスのデザイナー、クレア・ワイト・ケラーによる、エフォートレスで洗練されたスタイルが完成。LifeWearの上質な普段着を、タイムレスなデザインとモダンなシルエットで鮮やかに昇華」(同社HPより抜粋)したものだ。
私は、これまでのデザイナーとのコラボレーションと今回のユニクロ:Cは、全く異なる位置付けにあると見ている。簡単に言えば「海外の有名デザイナーを活用するも、自分の名前(ユニクロ)で成長を狙っている」ということだ。
これについて別に驚くことはない。例えばモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH)は外部の有名人材をデザイナーに起用しているが、誰もなんら不思議には思わない。むしろ、日本人の桑田悟史氏が「LVMHプライズ2023」のファイナリストに残ったことが記事になるように(その後グランプリを受賞)、とても名誉なことで、これは企業ブランドと個人ブランドの強弱の関係によって変化する。
次に、アパレル産業を取り巻く社会の変化である。今、世界的に人口は増え続け食糧問題まで浮上してくるほどだ。その中で、経済の基本的なベースとなる約束事である「キャピタリズム」(資本主義)が、どこまでゆけば新自由主義と呼ばれる弱肉強食の世界になるのか、どこでどのように手加減すれば人類と共存できるのか、誰も決定的な答えを出せない。
もちろん、一部の例外を除き裸で生活している人はいないわけだから、「人が増えればアパレル需要も、、、」といいたいところだが、現在の人口が爆発的に増加している東南アジア、インドなどが日本企画の服を着るとは思えず、一着、500円、1000円という超低価格の服を量産するプラットフォーマーがデジタル技術をひっさげ中国、韓国からどんどん出てきている。Shein(シーイン)など未確認情報はあるものの、例えばこのようなデジタルモンスターが上場すれば、すべて明らかになることではあるが、ユニクロとて安泰とはいえないし、ホームグランドでの圧倒的勝利は死守したいところだろう。
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