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ロピア、オーケーで揺れる関西スーパー業界!知られざる強者「万代」の強さの秘密とは

首位ライフにも迫る関西第2のSM企業

 「生鮮の品質がよくなり、店の集客力がさらに高まっている」「ロピアの攻勢にもしっかり対応できている」──。ここ最近、こうした評判の声が複数の業界関係者から挙がっているのが、関西一円で食品スーパー(SM)を164店舗(2023年5月時点)展開する万代(大阪府/阿部秀行社長)だ。

 万代は1949年に「万代油脂工業」として創業し、62年に同社から分離して設立された「万代百貨店」を源流とする。「百貨店」を社名に掲げつつも店舗の業態は実質的にSMであり、チェーンストア化の流れに乗って出店を加速。87年には100店舗に到達し、89年に現社名へ変更している。

 その後も拡大を続けて2014年に年間売上高が3000億円の大台に乗り、一大SMチェーンとしての地位を確固たるものにした。本誌22年9月15日号「日本の小売業1000社ランキング」によると、万代の売上高順位はヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)に次いで国内第9位となっている。

 直近の23年2月期の売上高は3622億円。関西を地盤とするSM企業としては、ライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長:以下、ライフ)に次ぐ規模を誇る。ちなみにライフの近畿圏の売上高(23年2月期)は3733億円で、万代はそれとほぼ互角の存在にまでなっている。

 しかしそうした企業規模の大きさとは裏腹に、なぜ万代が競争激しい関西というマーケットにおいて成長を継続してきたのかという点にフォーカスが当たる機会は、それほど多いとは言えなかった。メディアにあまり登場しないということもあるが、「店づくりや商品政策(MD)は堅実で、もともとお客の支持も高かった。ただ、特色あるSMが多い関西において、何か傑出した特徴があるチェーンではなかった」(業界関係者)という見方がされていたことも大きい。誰もが知る大手チェーンでありながら、とくに首都圏をはじめとする関西以外のエリアの小売業からは、取り立てて注目されることが少なかったのだ。

“自主独立”を貫き成長続ける

 ではなぜここに来て、「万代の強さ」に言及する関係者が増えているのだろうか。その背景にあるポイントとしては、①万代を取り巻く外部環境の変化と、②万代内部で起きている変化の2つが存在する。

 まず①については具体的に、関西の食品小売市場における競争環境の変化である。とくに大きなターニングポイントの1つとなったのは、精肉をはじめとする生鮮食品の品質と安さを武器に、首都圏で圧倒的な存在感を放っていたロピア(神奈川県/髙木勇輔代表)の進出だ。同社が「寝屋川島忠ホームズ店」(大阪府寝屋川市)をオープンして関西に上陸したのは20年9月のこと。その後、兵庫県、京都府、奈良県でも出店を重ね、現在は計13店舗を関西に有する。直近では九州や台湾など新規エリアへの進出が注目されがちだが、ロピアにとって関西は今や、地盤の首都圏に次ぐ規模の事業エリアになっているのである。

 さらには、同じく首都圏で強い集客力を持つオーケー(神奈川県/二宮涼太郎社長)の進出も間近に控える。同社はエイチ・ツー・オー リテイリング(大阪府/荒木直也社長:以下、H2O)との関西スーパーマーケット(兵庫県/福谷耕治社長)をめぐる争奪戦に敗れたものの、22年に大阪府東大阪市の土地を取得、24年をめどに自力で出店することを明らかにしている。

 また、食品強化型のドラッグストアやディスカウントストアの他地域からの参入もここ数年で急加速。地場のSMが乱立しつつ切磋琢磨していた時代は終えんを迎え、関西の食品小売市場は熾烈な競争に突入している。

 そうしたなか、前出のH2Oや、イオン(千葉県/吉田昭夫社長)など大手流通グループを軸とした合従連衡の動きが関西地盤のSMでも加速。相対的に、“自主独立”路線を貫きながらマーケットシェアを維持・拡大するライフや万代の存在が際立った。なかでも、関西に特化して成長を続ける万代の経営戦略や、その強さの源泉に関心が向けられているというわけだ。

商品力向上と個店対応強化で躍進!

 そして②の内部変化については、商品力の向上と、個店対応力のさらなる進化が主な論点となる。

 まず商品力については、もともと生鮮食品を強みとする企業ではあったものの、ここ数年で品質がさらに向上しているという指摘が多い。その背景としては、自社内の製造機能の拡充に加え、M&A(合併・買収)を含めた外部企業との積極的な連携が挙げられる。

 前者についてはこれまで生鮮のプロセスセンター(PC)や物流センターの設置を進めてきたほか、18年には総菜製造子会社クックワン(奈良県)を設立。製造・物流の機能や効率の向上を図りながら、高い品質の商品を安定的に売場に供給する体制を整えている。

 後者に関しては、14年に滋賀県の農業生産法人を、21年にはベーカリー専門店を展開するアルヘイムフードサービスを、そして22年には兵庫県内の水産加工業者・マルカツ水産をそれぞれグループに迎え入れている。SM事業だけでなく、生鮮・食品の専門企業を取り込んだ「万代グループ」を形成することで、より品質が高く、手頃な価格の商品を販売し、お客の支持をさらに拡大しているのだ。

 そしてもう一方の個店対応力の高さについては、もともと万代は駅前立地、住宅街、郊外の幹線道路沿い、自社あるいは外部開発のショッピングセンター内のテナントなどさまざまな立地で出店を重ねてきた経緯がある。店舗の形態も、600坪超の大型店から古い商店街に位置する2層の小型店まで多岐にわたる。そのため、店ごとに商圏特性や顧客層は大きく異なり、万代はそうした“多様性”への対応力を磨いてきた。

 そうした前提に加え、某メーカー関係者は、「ここ数年でID-POSデータを中心とした購買データの分析に本腰を入れ始めたようだ」と明かす。個店ごとに顧客像を可視化・明確化したことで、より精度の高い売場づくりやMDが実行できるようになったとみられる。もちろん、前述した商品力の向上にもそうしたデータは大きく役立っているはずだ。

SMとしての“ど真ん中”を追求する

 万代はこうした自社の強みを認識したうえで、巧みなポジショニング戦略も遂行してきた。関西在住の本誌ライターはこんな指摘をする。「『ライフはいいけど、ちょっとだけ高い』と感じる層が関西におけるボリュームゾーン。この層に万代がよく“ハマって”いて、しかも生鮮のクオリティが高いので、品質に厳しい関西の消費者から支持を得ているように思う」

 関西圏では「品質訴求」か「価格訴求」のどちらかに振り切る傾向の強いSMが多く、だからこそ各社が強烈なカラーを打ち出して成長を続けてきた。そのなかで万代は目立たないながらも、価格と質の両軸を追求しつつ、個店対応力も磨きながら成長してきた。いわば、SMとして“ど真ん中”を攻め続け、顧客ロイヤルティを高めているのだ。

 本特集ではそうした万代の強さを、店舗、売場づくり、商品に関する詳細な調査に加え、業界関係者や一般消費者へのヒアリングも行いながらあぶり出していく。万代の“勝ち筋”は、関西という1つのエリアにとどまらず、全国の多くのSMにとっても大きなヒントになるはずだ。

万代会社概要

本社所在地 大阪府東大阪市渋川町3-9-25
代表者 代表取締役社長 阿部秀行
設立1 962年(昭和37年)5月
売上高 3622億9百万円(2023年2月期)
経常利益 68億55百万円(2023年2月期)
店舗数 164店(2023年5月時点)
正社員数 3110人(2023年5月時点)

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