開始からたった半年!あのシーインをあっさり抜き去った中国の最強EC「Temu」とは何か?
アプリのアクティブユーザー、わずか半年でシーイン越え!
Temuは昨年9月から米国での事業を始めたばかりだ。それにもかかわらず、ウォールストリートジャーナル(The Wall Street Journal)が5月に報道した記事「Fashion Giant Shein Raises $2 Billion but Lowers Valuation by a Third」によれば、アプリのアクティブユーザー数でシーインを追い抜いたという。同メディアが示すグラフによればこの半年でシーインはアクティブユーザー数を500万人ほど増やした一方で、Temuは2700万人以上をゼロから集めて抜き去ったことになる。
なおTemuは環境配慮や人権問題に積極的に対応することを大きくアピールしている。
途上国と先進国、資本主義と共産主義が混ざり合う中国の脅威
私は、再三中国の恐ろしさをもっと認識せよと説いてきた。シーインについても、日本ではもっとも早く本オンラインで紹介し、レナウンを筆頭に、バロックジャパン、マークスタイラー、ラオックス、シャープなどを実例に、我々の上司が中国人になる日が近いことを指摘してきた。すでに韓国企業は日本のZ世代に浸透しており、中国本土でも「日本製(あるいは日本企業のブランド)は安心安全」などという神話はもはやない、と最新の中国事情を通じて説明してきた。
今、中国のZ世代は、商品の原産国など関係ない。彼らは、自分の好みにあった商品を自由に選び、それが偶然日本ブランドであったり、偶然中国ブランドだったりというだけの話なのだ。
そして、こういう話を聞いて「ああ、彼の地ではそうなったか。やはり海外進出はまだ早いな」などと言っている日本人が大半であることに私は驚きを隠せない。本稿で紹介したTemuのように、日本人が逆立ちしても真似できない価格で米国人のハートをたったの半年で掴み、国家ぐるみで輸出政策に打って出るわけだ。シーインに4000人が並んで、大騒ぎする半年前に、私は大阪文化服装学院でシーインの講義をしていたぐらいだ。
シーインがすでに来日しているのと同様、必ず、こうした中国のモンスター企業は日本にやってくる。Amazonはすっかり日本に馴染んだが、Amazonの日本事業の売上(注ECだけに限らない)はすでに日本で3兆円を超えているのである。たとえば外資系企業が3兆円の売上を計上すれば、どこかの日本企業が3兆円の売上をなくす。同じようにユニクロとg.u.が日本で1兆5000億円の売上を計上すれば、日本のアパレルのどこかが1兆5000億円を失うわけだ。これほどのんびりしていて危機感がなく、個人資産が2000兆円もある国が近隣にあれば、進出しない方がおかしいと考えるべきだ。
事業を実際に立ち上げるには5年はかかる。つまり、今から5年後でなければ、私が提唱する「商社を活用した日本版D2C」は立ち上がらず、これで応戦しなければ、シーインやTenuのようなグローバルD2Cブランドに徹底的にこの国の産業はやられてしまうだろう。先日、現役のアパレルビジネスパーソンとこの話をしたところ、まったく話が通じず、酒に酔って意味不明なことをベラベラしゃべっていた。いわゆる提灯奉行(外の飲み屋で雄弁に天下国家を語るが、公式戦では全く発言もしない人)である。
私には、日本のアパレル不況の本質がはっきり見えている。
**5月31日、アパレル業界とDXというテーマで3回連続の講演を行い、アパレル産業に襲いかかる4つの力、そして、その力とどのように対峙してゆくべきかを全くノーコマーシャルベースで皆さんと討議を行う予定だ。本主旨に賛同してくれた韓国財閥企業も第3回に登壇し、第2回には、あのPKSHA Technologyの元役員が登壇してくれ、私たちと徹底討論する。第1回目は、私が世の中の変化を読み解くキーワードをお見せする。https://www.holon.ne.jp/seminar/20230531_webinar.html
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プロフィール
河合 拓(経営コンサルタント)
ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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