超低金利の終焉がM&Aを誘発する理由とは 高まる金利先高観に備えよ

アナリスト:椎名 則夫
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超低金利の終わりの始まりとM&A

nathaphat/istock
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  次に中長期金利の先高観。

 日銀総裁の交代を機に、デフレマインドが解消しつつあるとの認識のもとで、為替相場の一方的な円安進行を抑制するために、日銀が漸進的に長期金利の上昇を許容するシナリオが現実味を帯びてきています。

 円金利の上昇局面は随分久しぶりのこととなります。

 そこでまず気になるのは、負債過多の企業。筆者が上場小売企業を点検してみたところ、低収益かつ負債過多という企業は限定的と思います。さすがにバブル崩壊後とは異なります。影響があるとしても、一部の小売企業と外食企業にとどまるのではないでしょうか。

 むしろ金利先高観が高まる局面で、多数派である財務健全な企業がどのような財務戦略をとるのかが気になります。

 金利先高観が強まる局面(予想実質金利のマイナス幅が縮小する局面)へ移行する際、教科書的には借入を増やして投資をすることが理にかなうはずです。

 これまで負債による資金調達を抑制してきた財務力の高い企業が、借入調達を増やして、設備投資とM&A(合併・買収)を一気に加速し陣地を固める。金利先高観は、このような動きを誘発するのではないかと考えます。小売業界に1、2社そのような戦略的な企業が登場するだけで、大きな衝撃を生むのではないでしょうか。

 超低金利の終わりの始まりが、企業ごとの戦略性を問い、業界地図を塗り替える。そんなシナリオを筆者は頭の片隅におきながら、企業動向を追っていこうと思います。

 正夢になるでしょうか。

 

プロフィール
椎名則夫(しいな・のりお)
都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。
米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師

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アナリスト

都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。

米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師

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