大手食品卸の日本アクセスが「総菜とEC」を強化する理由と勝算とは 佐々木淳一社長が語る
食品卸大手の日本アクセス(東京都)は、以前から強みとしているチルド・フローズンの強化を図りつつ、菓子や酒類などのドライ商品も拡大し、「フルライン化」を進めている。また、総菜では「デリカ管掌」を新たに設置し、各業態への提案や商品開発にシームレスに対応可能な組織体制の構築にも取り組む。直近の動向や今後の戦略について、佐々木淳一社長に聞いた。
「巣ごもり疲れ」で総菜が回復
──コロナ禍の業績についてどのように見ていますか。
佐々木 2021年3月期の業態別売上では、コロナ禍の特需を受けた食品スーパー(SM)やドラッグストア(DgS)が大きく伸長しましたが、外出自粛や在宅勤務の普及、営業時間の短縮・休業などの影響を受けたコンビニエンスストア(CVS)や飲食店は不調で、全体としては減収減益となりました。一方、22年3月期第1四半期では、「収益認識に関する会計基準」が適用されたことから純粋な比較はできませんが、増収増益となっています。CVS向け売上は対前年同期比4~5%増と回復しており、飲食店も昨年の数値はクリアしています。また、SMやDgSなどは昨年好調だったことから反動減があると見込んでいましたが、いざ結果を見ると同3~4%増で全体を牽引しました。
──SMやDgS向け売上の反動減はなかったのですね。
佐々木 はい。ただ、その中身は変わっていると感じています。とくにSMでは、昨年の上期は家庭での調理ニーズが高まったことから調味料や粉物などが好調だった一方、総菜は衛生面での不安によりバラ売りができなくなったことから不調でした。ところが、今年は消費者が「巣ごもり疲れ」をしたのか、総菜の売上が回復し始めています。また、飲食店のテイクアウトを利用する人も増えました。SMや飲食店の出来立て感のあるメニューを楽しみたいというニーズが去年より高まっているのでしょう。
──総菜のニーズが伸長するなか、小売各社への提案や商品開発などにはどのように取り組みますか。
佐々木 従来は生鮮と総菜を1つの部署で管理していましたが、21年4月に新たに「デリカ管掌」を立ち上げました。今後はSM向けの総菜やCVSの中食、飲食店向け商材のシームレス化が進むとみています。これからは異なる業態の商品開発や原料調達を1つの組織でできるような体制を構築したいと考えています。また、人材不足や作業場での密を避けるといった観点から、プロセスセンター(PC)やセントラルキッチン(CK)を活用するSMや飲食店も増えているため、PCやCK向けの提案も強化していきたいです。巣ごもりは当分続くでしょう。自宅で食事する時間が増えれば増えるほど、われわれの出番はもっとあるはずです。組織もそのようなニーズに対応できるようにつくり変える必要があります。
人材も、多くの業態の経験を積ませるため、飲食店の担当者がSM、CVSにも携わるなどローテーションさせていきたいです。また、当社には管理栄養士や惣菜管理士の資格を持った社員が多数おり、こういった人材も積極的に活用していくつもりです。
総菜メーカーの販路拡大を図る
──総菜を今後の成長の柱とするのですね。
佐々木 そうですね。現時点の売上でSMの総菜が900億円、CVSの中食が2300億円、飲食店が約1550億円あり、合計すると約5000億円規模になります。中期的にはこれが
日本の卸売業150社ランキング の新着記事
-
2021/10/15
加藤産業・加藤和弥社長が語る「市場縮小時代の企業成長」とは -
2021/10/15
大手卸PALTAC、トラック待機時間から小売店の品出し時間まで削減! サプライチェーン全体の最適化を進める -
2021/10/14
日本の卸売業150社ランキング!コロナで沈んだ卸、浮上した卸は?山積する課題とは? -
2021/10/14
大手食品卸の日本アクセスが「総菜とEC」を強化する理由と勝算とは 佐々木淳一社長が語る
この特集の一覧はこちら [4記事]
関連記事ランキング
- 2023-11-01日本の卸売業150社ランキング2023を一挙公開!各社業績は軒並み好調
- 2023-01-06グループシナジー創出にセブン&アイとの連携強化……三井物産が描くリテール戦略のすべて
- 2024-10-15食品卸の老舗「日本アクセス」がAI・DX領域に新進出。“卸”だからこそできるDX戦略とは
- 2024-09-30100兆円市場誕生!食品卸、市場規模&市場占有率2024
- 2021-07-16伊藤忠、容器循環プラットフォーム運営のループ・ジャパンと資本・業務提携
- 2021-04-20グローバルSPAと真逆の理由でSDGsを強化するスーパーブランド、その隠された高収益の真実
- 2021-05-11伊藤忠商事、22年3月期の連結純利益5500億円 コロナ前超え最高益へ
- 2021-08-10独メトロ、日本からの撤退を決定、10月末までに全事象を終了
- 2021-10-14大手食品卸の日本アクセスが「総菜とEC」を強化する理由と勝算とは 佐々木淳一社長が語る
- 2022-01-19「デジタル化と小売業の未来」#16 D2Cが進むと卸・小売の従来の商習慣はどう変わる?