社長交代で新体制に移行、「地域ごとの店づくり」を強めていく=フジ 尾﨑 英雄 社長
天候や相場に左右されにくい生鮮の商品政策
──商品政策(MD)についてはどのような方針ですか。
尾﨑 常にニーズに耳を傾け、それらに応える商品を安定的に品揃えするのが基本的な考え方です。ただ「この街に、あってよかった。」をスローガンに掲げるフジとしては、お客さまに本当に喜んでいただける新たな取り組みへも積極的にチャレンジしていきます。
基軸となるのが生鮮食品です。このところの野菜の高騰などを鑑みると、小売業は単に仕入れて販売するだけで使命を果たせているのかと自社を省みているところです。企業からすれば価格が高ければ売上高が上がりますし、逆だと下がってしまいます。一方、お客さまの立場に立てば、安ければ嬉しいし、高いと困る。これでは相場に右往左往しているだけで、小売業としての工夫がありません。たとえば、冷凍や冷蔵技術を駆使した商品開発により、相場安の時に加工した、プライベートブランド(PB)の鍋野菜セットを安定した価格で販売するといったように、今後は、最新の技術を駆使して問題解決を図ることも模索していかなければなりません。
──PBといえば、ユニー(愛知県/佐古則男社長)、イズミヤ(大阪府/四條晴也社長)との3社によるPB「スタイルワン」があります。
尾﨑 スタイルワンは09年から販売をスタートさせ、これまで加工食品、日配品、生鮮食品など多様なカテゴリーの商品を充実させてきました。ただ近年、連携する企業の状況も変化してきています。イズミヤさんは14年からエイチ・ツー・オー リテイリング(大阪府/鈴木篤社長)グループとなり、ユニーさんも17年8月、持ち株会社のユニー・ファミリーマートホールディングス(東京都/髙柳浩二社長)がドンキホーテホールディングス(東京都/大原孝治社長)と業務資本提携を発表しました。今後も、当社を含む企業の環境は変化するでしょうし、その時の状況に応じた取り組みができればと考えています。
──商品戦略の一方で、サービス施策についてはどのように考えていますか。
尾﨑 高齢化とともに、従来とは異なるサービスも工夫しなければなりません。「フジグラン高陽」(広島県広島市)は、81年に当社が初めて広島県に出した店舗で、商圏内は高齢化の進行が著しい地域のひとつです。そうしたなか、数年前から店頭でラジオ体操を実施しています。毎朝9時からイベントスペースで開いているのですが、毎日100人ほどの参加者があり盛況です。ご年配の方はとくに健康への意識が高く、また、ここに来れば仲間と交流できるという楽しみも感じていただいているのだと思います。
また無料の買物バスも運行しています。商圏内の高陽ニュータウン内を巡回し、お客さまを店舗までお連れしています。利用者からは好評で、今後も続けていきます。このようにこれからも商圏特性の変化に応じた、新しいサービスを工夫していきます。
物流機能を競合企業と統合
──取り巻く環境が大きく変化するに伴い、商品、サービスをはじめ、あらゆる分野を見直さなければならないということですね。
尾﨑 そのとおりです。前述したように、従来のやり方のままでは、これからの時代を生き残っていくのは難しい。その意味では、お客さまには見えない部分も変えていかなければならないと考えています。
これまであらゆる企業が商品開発をはじめ、すべてを自社で完結させてきました。しかし近年、少子高齢化、人口減少に伴い、人材確保難が深刻な問題となりつつある今、チェーンストアを支えるインフラについても互いに助け合う時代が来るのでは、と思います。物流を例にとれば、競合する企業同士であっても共同物流を実施し、互いの店舗維持を優先させるといったことです。連携を強化し、地域のお客さまのライフラインを守っていくことも、私たちの役割だと感じています。
実際に、あるコンビニエンスストアのチェーン企業から、当社の物流を使わせてほしいと打診されたことがあります。今後は反対に当社からお願いすることもあるでしょうが、すべては、お客さまの暮らしを守るためです。
──最後に、今後の抱負について聞かせてください。
尾﨑 これからも地域の皆様が安心して生活できるような店づくりに力を入れていきます。お客さまのニーズに応じた商品、サービスを追求し、「この街に、あってよかった。」と思われる存在となれるよう努力していく所存です。