すべて“自前主義”で店舗事業より高い利益率を実現=ヨドバシカメラ藤沢 和則副社長兼CIO
家電量販店大手ヨドバシカメラ(東京都/藤沢昭和社長)のEC事業「ヨドバシ・ドット・コム」が好調だ。2017年3月期にはEC売上高1000億円を突破し、全体の売上高構成比15%を超えた(店舗事業も合わせた売上高は6580億円)。快進撃を続ける要因は何か、EC事業を統括する藤沢和則副社長に聞いた。
“何でも屋”をめざす、きっかけはマンガ
──ヨドバシ・ドット・コムは、家電以外にもさまざまな商品を販売しています。品揃えについての考え方を教えてください。
藤沢 もともと当社はカメラの販売から始まりましたが、今では日用品や食品までほとんどカバーするようになりました。
ファッションや酒類などはこれからですが、基本的には全商品、全カテゴリーを揃えることをめざしています。
同時に、高い専門性を重視しています。品揃え、商品知識、サービス、価格を店頭だけでなく、オンラインでも提供できるようにしたいと考えています。
──家電以外の商品を販売するようになった経緯を教えてください。
藤沢 オンライン販売は1990年代後半に開始し、もともと店頭で販売している商品のみを販売していました。
家電以外の商品を販売し始めたきっかけはマンガのヒットです。
その頃、店頭もオンラインも、品揃えを強化しようと試行錯誤していました。そのなかで、ゲームやマンガを売ってみようという案が出て、どうせやるなら専門店レベルの品揃えでやろうという話になりました。
店頭とオンラインの両方で販売し始めたところ、けっこう売れました。このヒットを見て、一般書籍もニーズがあるのではないかと思い、書籍も売り始めました。これもよく売れました。
次に日用品です。シャンプーやトイレットペーパーなどを販売し始めました。
このあたりから店頭とオンラインでニーズが違うことに気づきました。お客さまのECへの期待がだんだん高まってきて、次々と品揃えを拡大していきました。
同時に、メーカーから提案をいただくようになりました。ある取引先から、「売る場所をこれまでは流通が決めてきたが、これからは買う場所をお客さまが決める時代。どんどんチャレンジしてほしい」と言われ、この言葉が励みになりました。
今では靴やスポーツ用品も販売しています。
──オンラインではどのような購買傾向が見られますか。
藤沢 店頭と比較すると、1点当たりの単価は低いものの、買い上げ点数は多いです。金額ベースでは家電がいちばん高いですが、販売数ベースでは日用品、食品が最も売れます。
日用品、食品は昨対で180~200%のペースで伸びています。在庫を持てば回転するというよい循環ができています。
家電のついでに買うという利用者も多くいらっしゃいます。水やトイレットペーパーなど、重かったり、大きくて持ち運びが大変な商品はとくに人気です。
食品はもっと品揃えを強化しないといけません。早く一般的な食品スーパーのカバー率を超えたいと思っています。
物流・個配も自前主義、“宅配クライシス”は想定内
──ヨドバシ・ドット・コムのアイテム数はどれくらいですか。
藤沢 当社の店頭在庫は約45万アイテムですが、オンラインはその10倍以上の550万アイテムです。そのうち、即納できる在庫が70万~80万アイテム。EC売上の9割以上を即納在庫としてカバーしています。これがヨドバシ・ドット・コムの強みです。お客さまから注文の多い商品を中心に品揃えを増やしています。
──アイテム数は今後も増やしますか。
藤沢 はい。ECを拡大するなかで、いちばん課題になったのが物流センターでした。もともとかなり大きいセンターを持っていましたが、キャパシティが足りなくなり、昨年センターを移転しました。新物流センターは、さらに5倍くらい取り扱いできる余裕があります。
在庫のアイテム数は、1000万は少し厳しいかもしれませんが、400万くらいは可能だと思っています。
──物流フローはどうなっていますか。
藤沢 東京23区とそのほか一部の市は自社配送です。川崎にあるDC(在庫型物流センター)から12カ所のデポに行き、注文先に配送されます。ドライバーも自前で抱えているので、地区ごとに割り振り、無駄なく配送することができます。そのため、配送業者に委託するよりもトータルコストは安くなっています。
配送で問題になるのが再配達です。梱包も自社でやっています。できるだけ小さく梱包し、ポストに投函できる割合を増やすことで、再配達を減らしています。これはわれわれだけでなく、お客さまにとってもいいことですから徹底します。