卸売業から価値創造卸への脱却図る、低温物流でダントツめざす=日本アクセス 田中 茂治 社長
組織、管理会計を変更
──日本アクセスの強みは低温物流です。13年度の実績でも、商品売上高1兆5551億円のうち、チルドとフローズンを合わせた低温商品の売上高は9297億円と6割近くを占めます。
田中 チルドとフローズン以外で、たとえば酒類など当社の販売力が弱いカテゴリーもあります。MD戦略においてフルラインで提供すべきという意見もありますが、弱みを補完する戦略は採りません。
それよりも、今はチルドとフローズン、あるいは乾物・乾麺という強みをより強くすることに専念すべきだと思います。そして、低温カテゴリーにおける業界ナンバーワンの地位を堅持することをめざしています。しかも、単なるナンバーワンではなく、2位以下が諦めるぐらいのダントツのナンバーワンになることが目標です。
食品卸は、食料品小売市場のうち、酒類加工食品の31兆円の市場を巡ってしのぎを削っています。この市場は、非常に競争が厳しいマーケットです。そこで、当社の強みを生かし成長するために着目したのが、同じ食料品小売市場のなかの、生鮮食品市場と中食市場なのです。生鮮食品は14兆円、中食は8兆円もあります。また、外食市場23兆円も当然ターゲットに据えています。
生鮮、中食、外食市場での販売シェア拡大が可能になったのは、伊藤忠フレッシュと11年10月に事業統合し、生鮮事業を譲り受けたためです。
これにより、たとえばSMに生鮮食品売場の口座が持てるようになりました。これは大きな戦略的意味があります。なぜなら、生鮮食品の販売には、加工食品、チルド、フローズンなどとのシナジーがあるからです。今までできなかったクロスマーチャンダイジング(関連販売)の提案ができます。たとえば、鮮魚売場で「マグロのやまかけ」をメニュー提案してマグロの売上を伸ばそうと、カップ入りのとろろを商品化しました。マグロの横に関連陳列できるようになったのは水産売場の口座が持てたからです。このほかにも、加熱処理しない生の焼き肉のたれなど、NBメーカーと共同でお客さまの生鮮売場を活性化できる商品開発をしていくつもりです。
生鮮食品は、中食と外食企業にとっても必須な商品です。生鮮食品の13年度の売上高は対前年度比16.8%増の1161億円になり、今も大きく伸びています。
──一般的に、改革するうえで最も難しいのが社内の意識改革といわれます。どのように意識づけをしていますか。
田中 先ほど申し上げたとおり、当社は物販業からお客さま第一主義の流通サービス業へ転身しようとしています。いわば、企業の体質を変える大変革を起こそうとしています。そこで、着手したのが、組織と管理会計の改革です。
組織については、これまではモノを売る組織らしく、営業部隊はフローズン食品課、チルド食品課というように商品カテゴリー別に編成されていました。これを、お客さまとの取引全体を1つの部署で把握できるよう15年度より変更していきます。お客さまのことを組織としてより深く理解することはサービス向上につながります。よく、かゆい所に手が届くサービスといいますが、まずはお客さまのかゆい所がどこか知らなければならないのです。
同様に、これまでの管理会計も商品カテゴリー別でした。お客さま第一主義の企業にとって必要なお客さま別収支管理会計に、来年度、変更しようとしています。こうすれば、赤字が出ていたら、どこで赤字が出ているのかがわかり、どの分野が低収益でテコ入れしなければならないかがわかります。収支を“見える化”すれば、出血を止めたり傷を治したりする手を早く打つことができます。ただし、管理会計システムを変えるだけで100億円ほどの費用がかかります。第5次中計の3カ年で、このシステム費用を含めた改革のための総投資額は350億円を計画しています。環境が厳しくなったからといって改革の手を緩めるわけにはいきません。今改革しなければ日本アクセスの将来はありません。むしろ、180億円レベルの利益を出させていただいている今のうちにこそやらねばならないことなのです。