卸売業から価値創造卸への脱却図る、低温物流でダントツめざす=日本アクセス 田中 茂治 社長
──「流通加工」にも力を入れているそうですね。
田中 流通過程で付加価値を高める流通加工は、すでにいくつか実施しています。
たとえば、青いバナナを当社の設備で熟成させます。黄色く追熟させ、すぐに販売できるようにすることが付加価値です。
マグロもそうです。マグロを1船買いし、1本1本、ブロックやサクに加工します。これも流通加工による付加価値です。
お肉も同様です。当社では小売業のプロセスセンター(PC)に代わって肉を在庫、解凍し、必要な時間に必要な量を届けています。あるいは、市販用のスイーツなども発注に合わせて冷凍から冷蔵へ温度帯変更し、チルド食品として小売業の店頭に納品しています。冷凍品を必要数量だけ温度帯変更してチルド食品とすることにより無駄が出ず、ロスが減ります。これも流通全体最適化を担う「“発”帳合」機能です。
製造機能の保持も視野に入れる
──もうひとつ、「“脱”帳合」機能とは何ですか。
田中 「“脱”帳合」機能としては、たとえば製造機能を自社内に持つことです。ただし、当社はあくまでもナショナルブランド(NB)商品の販売代理店です。当社がやらねばならないのは、NBメーカーの商品をたくさん売ることです。ですから、NBメーカーと競合、対立するのではなく、NBメーカーと協業して潜在市場を掘り起こして顕在化できるような商品開発を主目的としています。
また、なぜ製造機能を持つのかといえば、商品をつくる機能がないと卸にとって重要な経営指標であるマーケットシェアが拡大できないからです。
現在、マーケットシェアを拡大するには、NBメーカーの代理店としてシェア競争をするだけでは不十分な市場環境になってきています。今後、少子高齢化でマーケットが縮小し、競争はさらに激化するでしょう。一方で、小売業のプライベートブランド(PB)商品が急増しています。この分野で、現時点において、卸の機能はロジスティクスを除いてあまり期待されていないでしょう。もしもイギリスのように小売業のPB商品の市場占有率が高まれば、卸の生きる道はなくなります。ですから、独自に小売業のPB商品も開発、提案し、供給できる機能を持つことが必要なのです。
当社には長年展開している独自の「アクセス」ブランドの商品があります。メーカーと協業しOEM(相手先ブランドによる製造)でつくってもらっています。その売上高は13年度で約200億円になりました。しかし、正直に言うと、「アクセス」ブランド商品の当社とメーカーの契約は、売買基本契約に基づいています。つまり帳合取引の延長線上で仕入れているのです。今後はこれをすべて委託生産契約に切り替えていくつもりです。もとからすべてつくり直すことになりますが、製造において真の製造者リスクをとらない限りは適切なリターンを期待できません。将来的には自社で製造機能を持ち、自社生産した商品を小売業に供給することはあり得ると思います。しかし、それには製造技術はもとより、NBメーカーと同様にマーケティング機能も持たなければなりません。