卸売業から価値創造卸への脱却図る、低温物流でダントツめざす=日本アクセス 田中 茂治 社長
日本アクセス独自の価値を提供
──めざす「流通サービス業」は具体的にどのような企業なのですか。
田中 「卸」という軸はぶらしません。「卸」である日本アクセスでなければ提供できない価値があるはずだからです。
では、当社が提供しようとする価値は何か? それは第5次中期経営計画のなかの、3つの企業変革の1つで、強化すべき機能改革として挙げたものになります。社内では「“核”帳合」「“発”帳合」「“脱”帳合」機能と呼んでいます。
「“核”帳合」機能とは、事業の核となる卸売機能、つまり、ロジスティクスとマーチャンダイジング(MD)機能のことです。これを強化し、競争優位な体制をつくり上げていきたいと考えています。
「“発”帳合」機能とは、従来の卸売機能の延長線上で提供できる当社独自に創造する価値のことです。
「“脱”帳合」機能とは、従来のビジネスモデルに立脚した事業のターゲットとは異なるターゲットへ提供する価値を指します。本来、卸売業に期待されてきたのは、移転価値機能です。各地のよい商品を発掘し調達すること、そして商品を効率よく店舗に運ぶことの2つです。当社では、これ以外の機能、すなわちサービスの取り込みを図っていきます。
──「“発”帳合」機能とは具体的にどのようなことを意味するのですか。
田中 「“発”帳合」機能にはいろいろな事例があります。
たとえば、当社は国内に453の物流センターを持ち、1万社以上のメーカーから納品された商品を、1日当たり8500台超の契約車両によって全国10万店を超える店舗に納めています。全国に張り巡らしたこの物流網は当社の強みです。
現在、メーカーのなかには物流の確保に苦労されているところが少なくありません。そこで、店舗に商品を降ろした当社のトラックが、物流ルート上にあるメーカーの工場・倉庫に立ち寄り、センター納品の商品を積んでくれば、メーカーにとっても物流費削減につながり、当社にとっても調達物流業務の拡大ができます。13年度は、67件の委託を新たに受けました。
また、「ジョイントフォースDCM」も「“発”帳合」機能の提供価値の1つです。これは、当社が開発した独自の需要予測システムで、お客さまである小売業にとっては、需要予測に基づく自動発注で発注時間の短縮や在庫の最適化ができるほか、店舗での作業の効率化ができるメリットがあります。すでに4社に採用いただき、さらなる導入促進を図っています。
メーカーも卸も小売業も、解決したい課題は共通しています。人時生産性の改善とコスト削減です。先ほどの調達物流も「ジョイントフォースDCM」も、これら課題の解決につながります。卸である日本アクセスが仲立ちして流通3層全体の最適化を実現することは、当社だからこそ提供できる価値だと考えます。
そして、「“発”帳合」機能の1つとして、マーケティング機能も強化しています。たとえば、13年、当社は設立20周年を記念して、「フローズン・アワード」(正式名称「10万人が選ぶフローズン・アワード2013 最強の冷凍食品・アイスクリームはどれだ!?」)を実施しました。消費者の投票、全国の食品スーパー(SM)のバイヤーの投票、食のプロとマスコミ関係者の投票を経て最強の冷凍食品とアイスクリームを決めました。消費者の投票数は当初予想の10万人を大幅に超えて約26万人にのぼりました。
「フローズン・アワード」のようなメーカー横断型の全国的なプロモーションは、中間流通だからこそできるのです。この種の企画は、消費者の購買意欲を刺激します。価格訴求に頼らずとも商品購入してもらえるので、メーカー、小売業への価値提供につながります。