コロナ禍の20年4月に社長就任 エバラ食品工業の森村剛士氏が語る「エバラらしさ」とは
2020年は、流通業界にとって新型コロナウイルス(コロナ)によって大きな変化を余儀なくされた1年だった。その多難・激変の年に新社長に就任したのが、エバラ食品工業の森村剛士氏だ。コロナ禍においても、消費者の変化に対応した商品を提供し続ける同社の戦略、今後の展開についてたずねた。
コロナで経営環境が激変
様変わりするニーズに柔軟に対応
──コロナ禍の2020年に社長に就任しました。
森村 20年4月の社長就任直後、政府の「緊急事態宣言」が発出されたため、コロナ禍による環境変化に対応し続けた1年、という印象です。
経営環境は、文字通り激変したといってよいと思います。21年3月期上期の業績は、事業ごとにバラツキがありますが、主力の家庭用事業は、外出自粛による買いだめといった、いわゆる「巣ごもり消費」を受けて、需要が急増しました。その一方で、来店客数が減少した外食産業の影響を受け業務用事業は非常に厳しかったです。商品構成の変化や感染防止対策の徹底による一部経費の未使用により企業全体としては営業利益ベースで増益となっています。
──20年は、コロナ禍での商戦となりましたが、エバラ食品工業では、どのような商品戦略に取り組まれたのでしょうか。
森村 基幹商品である「黄金の味」シリーズでは、お客さまの嗜好が多様化していることを受け、20年2月に32年ぶりとなる新テイスト「黄金の味 さわやか檸檬」を発売しました。夏の「レモンブーム」も追い風となり、順調な滑り出しとなりました。また、「プチッと鍋」や「プチッとうどん」などのポーション調味料の育成にも注力しました。1個1人分の使いきりで、常温保存が可能といった利便性や、人数に合わせて家族でもお使いいただける点が支持され、秋冬だけでなく年間通じてご利用いただける商品群へと成長しました。また、秋冬については新商品の発売を1品に絞り、基幹商品の安定供給を最優先に事業を継続してまいりました。
──コロナ禍では、商品のニーズにも変化がありましたか。
森村 外出自粛や在宅勤務の普及によって、内食機会が増加し、調味料にはさまざまな料理に使える「汎用性」と手軽につくれる「簡便性」がこれまで以上に求められるようになりました。毎日の食事づくりに頭を悩ませているお客さまのお役に立てればと、「黄金の味」で手軽にできる汎用メニューをご提案するCMを制作したところ、反響がありました。また、昼食需要の高まりに伴い、うどんをまとめ買いされる方が増えたので、本格的な味わいのうどんが簡単につくれる「プチッとうどん」のCMを前倒しで放送し、店頭露出も強化しました。
──外食に出かける機会が減った代わりに、家庭での食事にこだわるようになった、といった傾向もあるようです。
森村 そうですね。たとえば、飲食店に出かけずに、宅配してもらうケースが増えています。業務用事業では、外食産業の得意先さまに対してテイクアウトメニューなど新しい生活様式に沿った提案を進めています。一方で、家庭においても外食店で食べるようなメニューが手軽につくれる調味料の提案や、新しい食べ方提案など、簡便性だけでなく、生活の質を高める提案を進めています。コロナ禍は当面続くと想定されるので、21年には、肉まわり調味料を中心とした新商品を拡充するなど、カテゴリーの活性化に貢献してまいります。