“顧客体験の最大化”をめざす丸亀製麺 顧客の生の声から見えてきた意外な問題点とその解決策とは

若狭 靖代(ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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神谷亮介氏の写真
丸亀製麺マーケティング統括部CX推進部部長 神谷亮介氏

“声かけ”やアプリ改善などの施策を実施

 抽出したこれらの問題点を解決するため、CX推進部が提案し営業部と共に実施した施策が、ホールスタッフというポジションの新規導入と、同スタッフによる声かけやサポートの強化だ。戸惑っているお客、慣れていなさそうなお客には積極的に声をかけ、注文システムの説明や疑問の解決をすることで安心感を持ってもらうことがねらいだ。

 また、注文口でテイクアウトのお客であることがわかった場合、キッチンスタッフがホールスタッフを呼び、袋詰めなどをサポートすることで時間を短縮する。とくにテイクアウトのサポートは、後ろに並ぶお客にも「何かやっているな、注文が多そうだな」という雰囲気が伝わり、物理的な時間の短縮効果以上に「予想よりも待たされた」という感覚を軽減する効果が大きいという。このサービスはテイクアウト導入の1〜2カ月後に開始し、感触を確かめながら半年ほどかけて全店舗に拡大した。

 デジタルを通じた顧客体験の改善もCX推進部が担当する。とくにアプリについては現在、顧客体験を最大化するという考えの元に根本から設計を見直しているところだ。「セルフサービスでは、お盆(トレー)や荷物を持ちながらさらにアプリを出すという動作のハードルが高い。それでも『使った方が便利でお得』なアプリにする必要がある。お客さまのベネフィットを考えず機能を追加するだけでは結局使われない」(神谷氏)。具体的には、パーソナライズされたおすすめ商品の提案やクーポンの提供など、顧客一人ひとりとのコミュニケーションツールとしての立ち位置を探っているところだという。

顧客視点でゼロからサービスを考える

 CX推進部の進める顧客体験改善に共通するのは、「サービスが先にあるのではなく、お客さまが丸亀製麺ブランドを感じるベストな体験をするためにはどういうサービスが必要か、という視点」(神谷氏)だ。「闇雲に実績や根拠のないサービスを取り入れたのでは本当の顧客体験の改善にはつながらないし、店舗の理解も得られない」(神谷氏)からだという。

 「将来的にめざすのは、丸亀製麺のシステムが、うどん屋の完成されたスタンダードなシステムとして認知されること。他社が追従せざるを得ないレベルにまでブラッシュアップできれば、丸亀製麺の真似のできない手づくり・できたてのおいしさがより一層引き立つ。そういう世界を作っていきたい」と意欲的に神谷氏は語った。

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