“顧客体験の最大化”をめざす丸亀製麺 顧客の生の声から見えてきた意外な問題点とその解決策とは

若狭 靖代(ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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地道な調査でわかった改善点

 どんな時にお客が戸惑いや不安を感じるのかを詳しく分析するには、生の声を集めることが必要不可欠だ。「実際に店頭でお客さまの様子を観察し、迷ったり不慣れな様子のお客さまがいたら直接話を聞いた」(神谷氏)。こういった地道な調査の結果見えてきた、セルフサービスによるネガティブな体験の典型的な例は次の通りだ。

 来店客が一列に並んでうどんの注文、天ぷらなどの選択、会計を順番にこなしていく丸亀製麺のシステムは慣れているお客には便利だが、そうでないお客は「流れに乗らないといけない、後ろの人を待たせてはいけないというプレッシャーを感じやすい」(神谷氏)。初めて店舗を訪れ、他のお客と同じようにとりあえず列に並んでみたものの、どんどん近づいてくる注文口に焦り、じっくりメニューを選ぶ余裕もなくとにかく目についたものを頼んでしまうというパターンに陥る人は少なくないという。

 また、新たに導入したサービスが歪みをもたらすこともある。丸亀製麺では、コロナ禍でテイクアウトを本格的に導入したが、これが思いもよらぬところで不満を生んでいた。現状のシステムでは、イートイン(店内喫食)とテイクアウトのお客は同じ列に並ぶ。並んでいるお客は前に並ぶ人数を見て無意識に「待ってもあと2、3分だな」などと予想するが、テイクアウトのお客の場合まとめて数人分を購入することが多いため、イートインのお客よりも注文や会計に時間を要すことが多い。そのため、「お持ち帰りのお客さまが並ばれていた場合、イートインのお客さまが『思っていたよりも待たされた』という感覚になり、不満に変わってしまう」(神谷氏)。

 丁寧に聞き取らなければ見えてこなかったこれらのネガティブな経験は、「(丸亀製麺は)分かりづらい」「待たされる店」というブランドそのものへのマイナスイメージに直結する。

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