激動の流通 #6 コロナ禍でも快進撃続けるユニクロの“隘路”
なぜユニクロは中国で成功できたのか
ユニクロのように、国内の大手小売が中国市場を攻略した事例は少ない。あるファッション専門紙の記者は「ユニクロの中国成功の一因は、マーケティングの成果」と指摘するが、もちろんそれも要因の1つだろう。
その一方、あるアパレルメーカーの幹部は「1人の中国人の功績が大きいのではないか」とみる。その人物こそ、現在ファーストリテイリングのグループ上席執行役員でグレーターチャイナCEOを務める潘寧氏だ。
潘氏は、日本国内の大学を卒業し、まだ中小企業だった頃のファーストリテイリング(ユニクロ)に入社。そして、中国の事情をよく知る1人として、中国事業を現在の規模にまで育て上げた。
前出のアパレルメーカーの関係者は「潘氏がファストリの中国市場を軌道に乗せたといってもいいのではないか」とまで言う。潘氏に活躍の場を与えた柳井正会長兼社長の先見の明があったからこそとも言えよう。
欧米市場をどう攻略するか
拡大が続く中国市場で一定の成功を収めたユニクロ。そんな同社に“隘路”があるとすれば、攻めあぐねている欧米市場だろう。
世界のアパレル市場で1位の「ZARA」を展開するインディテックス、「H&M」を擁するエイチ・アンド・エム(H &M Hennes &Mauritz AB)が先行、行く手を阻まれているからだ。
ユニクロの米国の店舗数は約50店にとどまっており、欧州もフランスが20数店を展開するのみ。国内のユニクロの店舗数が770店超、中国が710店超となっている現状を考えると、欧米の店舗は決して多いとはいえない。
ある大手化粧品メーカー幹部は、「欧米人からみれば、アジア人がつくるファッションブランドだから」と述べる。「いくら品質や縫製が価格以上によくても、ファッションという嗜好性の強い分野において、ユニクロと欧米のブランドとの間には“越えられない壁”がある」(前出アパレルメーカー関係者)という指摘もある。
ただ、2020年11月に発売した有名デザイナーのジル・サンダー(JIL SANDER)とのコラボ商品が大ヒットとなるなど、ファッション性の高い商品でユニクロは一定の成果をあげている。欧米ブランドとの間に立ちはだかる“見えない壁”は、すでになくなりつつあるのかもしれない。
激動の流通 の新着記事
-
2021/01/25
激動の流通 #7 新体制ファミリーマートの行く末 -
2021/01/18
激動の流通 #6 コロナ禍でも快進撃続けるユニクロの“隘路” -
2021/01/11
激動の流通 #5 ドラッグストアの次なるターゲット -
2021/01/04
激動の流通 #4 ニトリ、売上高3兆円までの道のり -
2020/12/28
激動の流通 #3 大変化の2020年、真価問われる2021年のコンビニ -
2020/12/21
激動の流通 #2 再び存在感増す食品スーパーの「天敵」
この連載の一覧はこちら [7記事]
ファーストリテイリング(ユニクロ)の記事ランキング
- 2024-01-02勝ち組はSPAではなく「無在庫型」へ 2024年のアパレル、5つの受け入れ難い真実とは
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
- 2023-08-28ユニクロと東レとのサステナブルな関係から生まれたリサイクルダウン
- 2021-03-05ビジネスは「一勝九敗」 ファーストリテイリングを世界的大企業に導いた“柳井哲学”
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2021-05-18全産業中ワースト2位の不都合な真実、アパレル業界の環境破壊と人権問題を解決する方法
- 2024-08-27好調アパレルに異変?在庫回転率悪化の複数要因とファストリ改善の理由
- 2024-11-16ファストリが3兆円突破!24年8月期決算で語られた今後の成長戦略
- 2019-04-12柳井正が語るユニクロ「働き方改革」の真価
- 2021-03-23死に体なのにアパレル産業の倒産が少ない理由…TOBによる金融主導の業界再編激増
関連記事ランキング
- 2024-01-02勝ち組はSPAではなく「無在庫型」へ 2024年のアパレル、5つの受け入れ難い真実とは
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
- 2023-08-28ユニクロと東レとのサステナブルな関係から生まれたリサイクルダウン
- 2021-03-05ビジネスは「一勝九敗」 ファーストリテイリングを世界的大企業に導いた“柳井哲学”
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2021-05-18全産業中ワースト2位の不都合な真実、アパレル業界の環境破壊と人権問題を解決する方法
- 2024-08-27好調アパレルに異変?在庫回転率悪化の複数要因とファストリ改善の理由
- 2024-11-16ファストリが3兆円突破!24年8月期決算で語られた今後の成長戦略
- 2019-04-12柳井正が語るユニクロ「働き方改革」の真価
- 2021-03-23死に体なのにアパレル産業の倒産が少ない理由…TOBによる金融主導の業界再編激増