イノベーションの5段階ピラミッド 競争優位を保つためにはどのような種類のイノベーションが必要か
業界のルールを変える、ビジネスモデルのイノベーション
3番目のイノベーションは、ビジネスモデルのイノベーションだ。「製品やサービスを超えて、それらを生産したり、顧客の手元に届けたりする際に、どんな新しい方法を用いるかというところに関わるもの」(ハメル氏)である。
小売業で言えば、SPA(製造小売業)型のビジネスモデルへの取り組みを挙げることができ、個別企業では、ファーストリテイリング(山口県/柳井正会長兼社長)やニトリホールディングス(北海道/似鳥昭雄CEO)、良品計画(東京都/松﨑曉社長)、神戸物産(兵庫県/沼田博和社長)などが該当する。
業界のルールそのものを変えてしまうために、競合他社は簡単に追いつくことができないことが特徴だ。上記4社はその典型で、いまから同じ手法で追いつこうとすれば、相当な時間がかかるに違いない。
日本の企業が苦悩する構造的イノベーション
4番目のイノベーションは、構造的イノベーションだ。これは、産業構造自体を根本的に変えてしまうものであり、その代表格はアップルとアマゾン・ドット・コムだ。
ハメル氏は、「アップルが音楽産業に対して行った(中略)イノベーションは〈iPod〉というハードウエアではなく、レコード会社を一堂に集めて、これまでにない法的な枠組みで楽曲をインターネット上で販売するのに同意させたこと」と喝破し、日本の企業が苦悩しているのは、構造的イノベーションができないことであると指摘する。
私なりに解釈するならば、日本は、従来の既得権益や縦割りの産業構造が強過ぎるため、その壁を打ち破る発想はあっても、実現する前のどこかの段階で潰されてしまっているような気がする。ただ、既存の業際をどんどん突破していった、かつてのセブン-イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長)の方向性などは、このイノベーションに極めて近かったと思う。
千田直哉の続・気づきのヒント の新着記事
-
2024/09/02
魅力的な売場…抽象的な誉め言葉の意味を明確化するために必要なこととは -
2024/08/02
日本酒類販売社長が語る、2023年の酒類食品流通業界振り返り -
2024/07/03
「何にでも感激する経営者」の会社が業績が良い“意外な”理由 -
2024/06/07
経費率16%なのに?ローコスト経営企業が敗れ去るカラクリとは -
2024/05/23
キットカットをナンバーワンにしたマーケター「アイデアより大事なこと」とは -
2024/04/15
スーパーマーケット業界のゲームチェンジャー、オーケー創業者・飯田勧氏の経営哲学とは
この連載の一覧はこちら [1799記事]
関連記事ランキング
- 2024-10-04リーマンショック直後にとった、ある小売名経営者の洞察と行動
- 2020-03-23橋田壽賀子脚本の名作『おしん』のモデルといわれる2人の女性スーパーマーケット創業者
- 2020-04-16無印良品、ロフト、パルコ…セゾンを作った男、堤清二物語
- 2019-12-181店舗で売上150億円超!ジョイフル本田をつくった男のスゴイ経営哲学
- 2020-02-28日本最大の釣り具チェーンを育て上げた”釣り業界の革命児”、上州屋・鈴木健児物語
- 2024-08-02日本酒類販売社長が語る、2023年の酒類食品流通業界振り返り
- 2019-12-27だから“世界一”になれた!「ジョイフル本田をつくった男」が教える“失敗しない”方法
- 2020-02-20日本で初めてスーパーを創業した吉田日出男物語
- 2020-04-08コロナの逆風下だから知っておきたい「ゆめタウンをつくった男」山西義政さんの38の金言
- 2020-05-01オーケー、テンアライド、セコム 起業家兄弟を育てた父・飯田紋治郎の教え