物流強化、データ活用、デジタル変革…変わる生協!コロナ特需を好機に“攻め”の投資
利用金額、継続年数、購入内訳いずれも生協宅配が圧勝!
しかし、コロナ禍で成長したのは生協宅配だけではない。感染防止の観点から利便性が見直され、生協と直接競合すると思われる生鮮宅配やネットスーパーが勢力を拡大している。
たとえば、小売大手のネットスーパーの20年度第2四半期売上高を見ると、イトーヨーカ堂(東京都)は同1.5倍に、イオンリテール(千葉県)は同1.2倍に伸長。また、ライフコーポレーション(大阪府)がアマゾンジャパン(東京都)の有料会員向けサービス「Prime Now(プライムナウ)」に出店し展開する生鮮宅配については今年7月、事業エリアを東京都から大阪府にも広げた。このように各社が一気に拡大する気運にある。
それでは、生協宅配はその他競合と同じ立ち位置にあるのだろうか。そのことを確かめるため、本誌では、流通小売業界向けコンサルティング事業を展開するソフトブレーン・フィールド(東京都)の協力を得て、食材宅配とネットスーパーの満足度・利用動向調査を実施した(65ページ)。すると、「利用金額」や「利用継続年数」などの点で生協が群を抜いて支持が高いことがわかった。
さらに購入内訳を見ても、その他のサービスが米や水など店舗では重たくて買物の負担となる商品が中心であるのに対し、生協は生鮮や日配、加工食品まで買われ、日常に必要なものを買い揃える買物ツールになっていることが明らかになった。
つまり、他のネットスーパーや生鮮宅配と比べ、生協宅配の強さが際立っていることがわかったのだ。
また、コロナ禍では、特異ともいえる生協の配送モデルも強みとなった。
生協は週に1回の定期配送で、基本的に同じ配送担当者が商品を届ける。そのため毎週の仕入れや配送を計画的に行えることから、廃棄ロス低減や配送の効率化、組合員との顔の見える関係構築が図れる。
この体制のもと、今回需要が集中し物流・配送のキャパシティを超えた際には、生協側は配送件数の多い曜日から少ない曜日に物量を調整するなどの対策をとり、組合員も配送日の変更などに対し協力的な姿勢を示す姿が取材を通じて窺えた。こうした対応は、競合他社に多い単発利用による即時配送モデルではなかなか難しいだろう。
デジタル活用を進める全国的なプロジェクトが稼働
では、勢いづいた生協陣営はいかに次の手を打とうとしているのか。
まずは宅配事業の物流体制強化だ。これにより主力の宅配事業で配送可能件数を増やしさらなる成長を図る。
たとえば、競争の激しい首都圏を事業エリアとするコープデリ連合会(埼玉県)は、今年3月には東京都大田区に、5月には同荒川区に最新の物流センターを稼働した。これにより肥沃なマーケットが広がる東京23区内でのさらなる需要奪取を図る。同じく生活クラブ東京(東京都)も東京23区内への侵攻を強めるべく物流投資を進める方針を明らかにしている。
食品から日用雑貨まで多いところで約2万品目を扱う生協では、物流センターでの商品の集荷・ピッキング(仕分け)作業が物流効率化のカギとなる。たとえばコープさっぽろ(北海道)ではAIを活用した自動ピッキングシステムを18年に導入し飛躍的な仕分け作業の省力化・効率化に成功している。このように最新技術を生かして物流センターの効率化を図る動きも広がっていきそうだ。
次に、デジタル活用の推進だ。象徴的な動きとして今年4月、日本生協連主導のもと、全国の地域生協のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進するプロジェクト「DXコーププロジェクト」が稼働した。
これまで生協陣営は全般的にデジタル活用が遅れているといわれてきた。しかし、外部の専門家やスタートアップ企業の協力も得ながらいよいよ本腰を入れて取り組む姿勢だ。
なかでも注目されるのが、スマホアプリをはじめネットを活用した決済手段や注文方法の進化だ。すでに先進的な事例も見られ、たとえばみやぎ生協・コープふくしま(宮城県)では、19年8月に独自のスマホ決済アプリ「CooPay(コープペイ)」を開発しており、この導入効果も後押しして現在、供給高に占めるキャッシュレス比率は5割を超えている。
そうした先に生協が見据えるのが顧客データの活用だ。生協は新規加入時に口座登録を必要とすることなどから、多くの顧客データを有する。しかしその活用はあまり進んでおらず、多くの生協では宅配事業と店舗事業のデータの相互連携も行えていないのが実情だ。こうしたなかデータ連携や活用がDXにより進めば、組合員の特性に応じた提案力向上が可能になるだろう。
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