成城石井の人気商品「ナポリタンチョコレート」はなぜ差別化に成功したのか

2020/10/13 05:55
    上阪徹 ブックライター
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     しかも成城石井には、小売りの機能だけがあるわけでなかった。自家製の総菜やデザートなどを作っているセントラルキッチンというメーカー的な機能もあった。近年では、ル バーラ ヴァン サンカンドゥなどの外食事業もある。原料を買ってきても、いろんな場で活用できるのだ。

    「また、セントラルキッチンには優秀な経験のある料理人がいますので、そこで新しいものも生み出せる。原料を自分たちで調理することで付加価値を生み出し、差別化できるものをお客さまに提供できるという流れができているんです」

     だが、魅力的な製品を見つけるのも大変だが、原料を見つけるのも大変だ。

    成城石井本の書影
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    「製品でいえば、どんな魅力があるのか、というところで仕入れを決められるわけですが、原料はもっとクリエイティブに考えて持ってこなければいけません。どうやって買ってきて、どう魅力的な商材に仕上げられるのかを考える必要があります。ですから、展示会には、いろんな情報を先に手に入れて、どんな原料にどんな可能性があるかも知った上で行かないといけないんです」

     展示会に滞在できる時間は変わらない。その中で、製品ばかりでなく、原料にも目を光らせないといけないのだ。だから、成城石井のバイヤーたちは、展示会場を飛び回るのである。

    「私が初めて行った海外の展示会はフランスのパリの展示会でした。その頃は、フランス、ドイツなどヨーロッパからの輸入が中心でしたが、最近ではアジア圏でタイに行ったり、中南米でメキシコに行ったり、中東のドバイに行くこともあります。展示会も視野が広がっているんです」

     アジアや中南米には、ドライフルーツやスナック、冷凍野菜やピューレなどが充実しているという。

    「南米のフルーツは糖度が高くて甘いんですよね。ブロッコリーのような野菜もヨーロッパに比べるとしっかりしているので、レンジで温めるようなお惣菜に使ったときにも、食感が残ります。同じブロッコリーでも、産地によってまったく違ってくるんです」

     そんな原料、バルク輸入の初仕事がこの成城石井 ナポリタンチョコレートだったのである。

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