破綻が迫るアパレル企業の事業再生手法#4 オペレーション改革 最も大きなコストを最小化する

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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二枚目はオペレーション改革

 さて、不要な商品(在庫)、不要な業務、不要な組織を切り離した後、事業部は「オペレーション」、つまり業務フローの適正化を行うことになる。

 ここで断っておきたいのは、「オペレーション」と「戦略」は違うということだ。オペレーションというのは、企業、事業の営業活動・支援活動をいう。しばらく、一般論にお付き合い願いたい。オペレーションの向かう先は3つしかなく、専門用語でQCD (Quality品質、Cost コスト、Deliveryスピード)という。オペレーション改革とは、販売、マーチャンダイジング、調達、流通などの諸活動に対し、如何に高品質に、低価格で、スピーディーに行うかということを求めることにほかならない

 これに対し、「戦略」とは、競争相手、顧客のニーズ、そして、自社の得意領域を明確にし、マーケットの中で独特なポジションをとることをいう。アパレル企業の再建では、このダイナミックな戦略を「改革」と呼び、二枚目の「改善」と言葉を別けて説明する。また、海外進出、異業種への進出、M&A(合併・買収)などのダイナミックな大改革=戦略については「三枚目」で語るため、お急ぎになる気持ちを抑えて「紙めくり」を順序立てて行って頂きたい。

 まず、アパレルビジネスのオペレーション改善は、コスト・ターゲットを決める必要がある。日本人は伝統的にQC活動が得意で、自分の担当業務の生産性向上は製造業などでは常識だった。しかし、他の組織の話になると、「我関せず」という態度をとるのが常だし、コスト削減といっても、その効果検証を先に評価せず、同じ10%の改善を行ったとしても、その効果がコンマ数%しかない場合も総コストの20%を占めたりする場合も同列で行い、製造業では改善すべき課題が10も20もあるという状況に陥っている。また、そもそもその業務は不要であるにも関わらず、その業務を所与のものという前提で改善を行うこともある。そもそもターゲットとすべき「コスト」を、どこに絞り込むかという議論が抜けている場合が多い。

 例えば、アパレルビジネスの場合、生産は工場が、副資材は副資材メーカーが、流通は商社が担って、在庫はアパレルが、そして、販売は小売りが行うという二人羽織ならぬ、多階層による伝言ゲームのような業務フローでものづくりが流れている。複雑怪奇なバリューチェーン(ものづくりの流れを、このようにいう)全体が、複数の企業で構成されており、店頭で消費者の手に渡るときには恐ろしいほどの高額な流通コストを背負っているわけだ。

 だから、本来、最終商品を構成しているコストを分解し、それぞれの売価に占める割合を見て、最も大きなコストをバリューチェーン全体で最小化すべきなのである。バリューチェーンを構成する個別企業が個別最適で単独コストを削減努力しても、ものづくり全体のオペレーション改善には繋がらない。

 

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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