アフターコロナ時代のBCPその2 小売業の近未来予測と投資するべきサービス
商品特性ごとに異なる
ウィズ・コロナの対応
このようにウィズ・コロナでの消費行動、価値観の変化は、来店を主軸としていた小売業の販売スタイルに大きな影響を与える。
店舗では「安全・安心の提供」を、また顧客接点としては「店舗以外でのタッチポイントの強化」を今まで以上に考える必要がある。切り口は色々あるが、今回は投資すべきサービスについて商品特性(最寄品・買い回り品・専門品)の切り口で考えてみたい。
まず、最寄品、買い回り品については、よりオンラインショッピング化が進むだろう。消費者がさまざまな情報に触れることができる現在は、ちょっとした接客により購入されていた商品もオンラインでの購入に切り替わっていく。
商品の質感やサイズ感を知りたい場合でも、たとえばオンラインで商品を選択し、リアル店舗で試着後、購入できるサービスや、自宅に商品が配送され、実際に商品を試着・確認後、購入しない商品は返送できるサービスなどがこれまで以上に増え、接触機会を極小化するショッピングに移行していく。
ウィズ・コロナで小売業が
投資するべきサービスとは
専門品については、従来のハイタッチなサービスのデジタル化がポイントとなる。消費者ひとり一人に寄り添ったサービスの提供は、今までは人による対面接客が実現していた。商品の購入までに時間をかける専門品は丁寧な説明や対応があってこそ、満足度の高い購入につながっていたのだ。
しかし今後は、このサービスレベルを崩すことなく、接触機会を極小化する工夫が消費者の安全・安心を満たす要件になっていく。
以上の見解から、ウィズ・コロナで重点的に投資すべきサービスを以下に示す。
①オンラインショッピングと店舗の両立(最寄品、買い回り品)
・ECサイトの提供と掲載商品の拡充(売上高全体の30~50%のEC化)
・Online merger with Offline:店舗とオンラインショッピングのシームレスな融合 (たとえば、EC注文後にドライブスルーをはじめ自宅以外の場所で受けとる「クリック & コレクト」や、ショールーミングといった仕組みの提供)
②ハイタッチサービスのデジタル化(専門品)
・よりワン トゥ ワンを意識したデジタルマーケティングの充実(タッチポイントの拡充)
・オンラインを利用したコンセルジュサービス
・非接触(ボイス/画像認識)でのデジタルサイネージ、オンライン動画での商品説明
③テクノロジーを活用した安全・安心の担保(すべての商品に共通)
・キャッシュレス決済への対応と、利用可能な決済サービスの拡充(クレジット決済、QRコード決済など)
・セルフレジの設置
本稿では、ウィズ・コロナにおけるBCPの枠を超えた事業戦略について、消費者行動・価値観の変化予測をもとに投資すべきサービスの仮説を述べた。
投資すべきサービスの選択は、ウィズ・コロナだけでなく、ビジネスが継続していくアフター・コロナを見据えて行う必要がある。そのポイントはウィズ・コロナで変化した「消費者行動・価値観」や「利便性を享受したサービス」がアフター・コロナでどう定着するかだと考えている。
それについては第3回の「アフター・コロナにおける新しい販売スタイル」で詳しく触れていく。