「圧倒的な商品力の差」から目を背け、「売り方」だけで勝負しユニクロに惨敗する悲劇
前回その詳細について説明した「Product Lifecycle Management (PLM)」について、2020年初頭、あるビジネス誌が「欧州でも導入実績は無い」とする記事を掲載したが、全くの事実誤認だ。米国ではすでに数十のアパレル企業が導入しているし、世界の工場が集積する生産地・中国でも本格的にPLMパッケージの導入検討が2年前から始まっている。
どうやら日本のアパレル企業は、「なぜ海外では導入できるのに日本ではできないのか」という理由を徹底的に考え抜く癖がないようだ。同様のことは「なぜユニクロにできて、自社はできないのか」という問いでも言える。その本質に迫る。
ユニクロを無視する悲しき日本アパレル
「私たちは独自のやり方をやっている」とは、変われない企業が必ずいう台詞である
2000年、ユニクロが快進撃を続けていた頃、日本の企業は「単なる安売り企業が頑張っているが、あんなものはファッションではない。いずれブームは去る」と高をくくっていた。
あれから20年、ユニクロは、日本のアパレル企業の遙か彼方に行った。今では「ユニクロは特別。我々と比較するのはナンセンス」というのが共通認識になっている。
競争をしているときは「安物屋」と無視しておいて、、競争に負けたら「ナンセンス」といって無視をする。こうしたメンタリティは、自らのやり方に固執し、彼我の差を学ぼうとしないと言っているのと同じで、組織が変わらない原因の一つである。アパレルビジネスで最も大事な商品力にかかわるバリューチェーンは、その典型といえる。
私は7年前、「ブランドで競争する技術」(ダイヤモンド社)を上梓し、日本企業がユニクロから学ぶべき論点を、誰も書かなかった生産領域に関する実態を深掘りし、解決策まで丁寧に書き記した。しかし、私の書籍は数多ある「How to本の一つ」の中に消え去り、昨年絶版となった。この書籍は、一部の企業を除いて改革のガイドラインとなることは無く、この世を去ったのである。私の絶望感は言い表せないほどだった。