PPIH、トライアルが社長交代へ 40代の若手トップは「長期的成長」をいかに実現するか
パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(東京都:以下、PPIH)と、トライアルホールディングス(福岡県:以下、トライアル)が相次いで社長交代を発表した。奇しくも、トップに抜擢されたのは両社ともに新進気鋭の40代。国内小売市場において急拡大を遂げてきた2社は、若手トップのもと新たな成長フェーズに突入できるか。
PPIHとドン・キホーテでは2000年入社の”新卒同期”がトップに就任

PPIHは3月28日、同社および中核会社のドン・キホーテ(東京都)の社長交代を発表し、同日に東京都内で記者会見を開催した。
PPIHの社長には同社代表取締役専務執行役員CSOの森屋秀樹氏、ドン・キホーテの社長にはPPIH代表取締役専務執行役員でドン・キホーテ代表取締役副社長の鈴木康介氏がそれぞれ就任する。9月26日に開催される第45期定時株主総会および株主総会終了後の取締役会を経て正式決定される。
森屋氏は47歳、鈴木氏は48歳で、ともに2000年新卒入社の同期にあたる。
このうち森屋氏は営業、物流、システムなどさまざまな領域に携わってきた経歴を持つ。「これまでの異動回数は50回を超える。グループの幅広い業務に携わってチームを形成し、実績を残してきた」(森屋氏)という、ドン・キホーテならではの”荒波”に揉まれながらキャリアを形成してきた人物だ。
一方の鈴木氏は店舗・商品畑の経験が豊富で、19年のユニー(愛知県)買収後は同社店舗の「MEGAドン・キホーテ」への転換を指揮した。
森屋氏は会見で、「これまで受け継がれてきた企業文化と経営理念を大切にしながら、一致団結して成長を推進していく」と力強く表明。鈴木氏も「アグレッシブに挑戦し続ける」と息巻き、「当社の伸び代は狭小商圏。そこにフォーカスした業態、たとえば食品スーパーなどにはポテンシャルがある」と具体的な考えも示した。
吉田社長「私よりもはるかに優れた人材にトップを委ねるときが来た」

ただ、吉田社長のもと業績が好調に推移していたなかでのトップ交代、そして突然の記者会見開催にはやや唐突な印象もぬぐえない。
これについて吉田社長は、「(19年の)社長就任時に、(社長の)任期は4年とすると申し上げたが、(今年9月で)丸6年となってしまう。実際には23年から交代の準備にはあたってきた」と前置きしたうえで、社長交代の主旨と意義について大きく2つを挙げた。
1つめは、「経営体制は定期的に変わるという、当たり前のことを実行する」(吉田社長)という考えだ。「今後、100年、200年と繫栄する企業になるためには、経営の交代がしっかりとなされることが大切。次世代の経営陣を発掘し、(社長職を)交代することはCEOの職務としての最後の仕上げだ」と吉田社長は説明する。
2つめは、経営トップにふさわしい人材の育成にめどが立ったことだ。「営業経験ゼロの私ではなく、新卒社員として入社し、PPIHの『源流』を体験し続けている、私よりもはるかに優れた人材にトップを委ねる時が来た」(吉田社長)。
なお、吉田社長は退任以降、取締役(特務担当)に就任予定。「消費者の変容に対するデジタル投資、やや足踏み状態の海外事業など、積み残したこともある。プレーヤーの一人として役割を担っていく」としたが、具体的な職務について言及はなかった。