売上100億円の超高収益アパレルが増殖の理由とユニクロとの共通点

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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最近、アパレル産業が徐々に移り変わっていることを感じている。「アパレル産業はもうダメだ」と言われ続けて久しいものの、「衰退期がない」産業だけに他の消費財とは事情がまったく異なるのだ。例えば、フィルム式カメラがデジタルカメラにかわるように、消費財は「成長期」「衰退期を」経て、まったく異なる消費財に変わってゆき、やがてなくなってゆく。しかし、衣料品は、どれだけ年月が経とうと人間がいる限り、そこには服があり、服のビジネスもあり続ける反面、大きなイノベーションといえる変化は起こりにくい。その意味で、アパレル・ビジネスには衰退期がないまま、進化も退化もせずに時間がすぎてゆく。人口が増加すれば、その分衣料品の数も増えてゆくのである。それでも、着実に変化が起こっている、それが今回の論考のテーマである。

写真はイメージ(AnnaStills/istock)
写真はイメージ(AnnaStills/istock)

売上100億円の超高収益アパレルの台頭

 アパレル業界の最大の変化は、売上高100億円程度と小規模だが、きわめて調子のよい企業が少しずつ表れてきたということである。たとえば私が相談にのっている企業の売上高は150億円と小粒だが、営業利益は10億円と高い収益性を誇っている。話を聞く限りではバランスシート(貸借対照表)も「綺麗」(資産に不良在庫も積みあがっておらず、借入金も適正範囲内ということだ)で、プロパー消化率は80%、残品率は5%以下である。

 売上100億円前後ながら、こうした超優良企業の特徴は以下の6つである。

  1. ディレクターなど企画担当がおらず、社長がそのままディレクションをしている
  2. KPIがほとんど存在しないか、あっても、まともに使われていない。感性を大事にする
  3. 単品の完成度が高く、商品は高額である
  4. 中には、Made in Japanで主たる顧客はインバウンド(訪日外国人)である(普通のアパレルの逆)
  5. プロパー消化率は80%を超え、在庫はほぼ残らない
  6. ネット販売に強く、初期はZOZOTOWNなどで販売し、大きくなった

  例えば、昨年アパレル業界の話題をさらったマッシュスタイルホールディングスやTOKYO BASEが、このタイプなのだが、マッシュのように1000億近くまで企業として成長するのは希だとして、「ミニマッシュ」ともいえる小型企業が次々と現れているのだ。アパレル産業は人が存在し続ける限り終わりがなく、成熟期にさしかかると、進化も退化もしなくなり、オペレーション勝負になるというのが特徴だ。

 

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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