インバウンドで最高益続出!日本人が知らない「百貨店の価値」とは

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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日本人が知らない 日本の百貨店の「特異性」とは

winhorse/istock
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 数の問題はさておき、日本の百貨店の調子が良いのは高額なブランド品が円安で安く買えることに加え、日本という国に対する「海外からの信頼」があるからだ。

「日本人は嘘をつかない。また、ちゃんとした百貨店で買えばニセモノなどを掴まされることもない」と外国人は考える。この「ニセモノでないこと」は、我々にとって常識すぎて気づかないが、無意識に存在する「大きな価値」なのである。

 世界の百貨店を見れば分かるが、日本ほど富裕層向けのMD(販売品)でちりばめられた業態は存在しない。日本の百貨店にゆけば、富裕層の欲望を満たす商品が山のように売られている。それらが、円安で激安で変え、かつ、「Bought in Japan =本物」というのし紙まで付いている。ラグジュアリーブランドを普段買わない層だって、「よし、日本で一丁買ってやるか」となるわけだ。

 今から25程前。日本が超円高だったとき、私は年に数回仕事でイタリアに行っていたが、日本では絶対に買わないような高額品を買いあさっていた。なぜなら、欧州ではあのLOUIS VUITTONがセールをやっているからだ。「円高、イタリア本国(本物)、セール」の三拍子揃えば、私のように貧しいサラリーマンでもLOUIS VUITTONのつかみ買いをする。その逆現象が今日本で起きているのだ。

 そう考えると、おかしなことが想起される。

「ますます貧しくなる日本人」と「ますます高額品が売れてゆく百貨店」の対比だ。

 我々は経済政策の失敗で失われた30年に入り、賃金は上がらず物価は上がり続けている。インバウンド達と違う現象が起きているのである。 

 今、日本の不動産を買いまくっているのは中国人である。何を隠そう私のマンションも先日中国人に買って頂いた。その結果、日本で良いところに住み、ブランド品に囲まれ、美味しいグルメを楽しむのは外国人。日本人は、キュウリの値段が安い隣町のスーパーに買い物に出かけ、海外旅行は我慢。でかけても、食事の高さに辟易して、ブランドものなど買えないということになる。

 外国人が豊かになり、日本人が貧しくなる。今の日本はそのようになっているのである。その象徴が「日本の百貨店」なのだ。

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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