インバウンドで最高益続出!日本人が知らない「百貨店の価値」とは
タイに旅行にいったときだった。ホテルからレストランまでタクシーを利用して、支払いを済まそうとしたら、運転手が「250バーツ(約1,000円)です」といったので、「ああ、1,000円なら安いな」と、なんの疑いもなくお金を払った。しかし、帰りのタクシーで料金を払ったとき、25バーツと、なんと1/10の値段だったことを聞いて、「騙された!」と思ったものだった。10年間アジアを回り続け、海外は慣れていたのだが、経営コンサルタントになって日本での仕事が多くなり、すっかり「世界の常識」を忘れてしまったようだ。さて、今日は、日本と世界の常識の差から、日本の百貨店の現状と未来について論じたい。冒頭の話が実は大きく関連しているのである。
インバウンドで日本の百貨店が業績絶好調
今の日本は、円安・株高。世界中から日本へ「インバウンド」と呼ばれる外国人観光客が押し寄せている(インバウンドは訪日外国人という意味)。彼らは世界地図でもっとも東に位置する「黄金の国ジパング」の文化、グルメなどを楽しむため、世界中から押し寄せてくるのだ。
おかげで、全国百貨店の2023年度売上高は対前期比9.2%増となる5兆4211億円(日本百貨店協会)となった。
三越伊勢丹ホールディングスの百貨店業の総額売上高は対前期比11.8%増の1兆1373億円。インバウンド売上高は1088億円と、コロナ前を大幅に上回り(20年3月期との比較で45%増)、過去最高を更新した。そして伊勢丹新宿店一店舗だけで同14.7%増となる、3758億円を売り上げた。25年3月期はなんと4110億円を予想している。
なぜ百貨店ばかりがもうかるのか。円安だけがその主たる要因であれば、百貨店以外の業態も同じように最高益をだしてもおかしくない。そこには、百貨店という日本独特の業態の特徴が隠されている。
私は、以前、百貨店の売上が落ち込んでいる時、「百貨店の将来」という論考で、「百貨店は不況ではない。たんに数が多いだけで、数が世界で見ても適正化されればその存在感は増してくる」と予言した。その裏には、「百貨店にはまだまだ存在価値がある」ということなのである。
本来100円のものを「1,000円ですと言われて1,000円払うビジネスは異常か?」
冒頭で私は運転手に「250バーツです」といわれ、なんの疑問も感じずに250バーツを支払い、そして、騙された。日本では考えられないことだ。こんなことが日本で起これば、昼のワイドショーで取り上げられてもよいぐらいの事件である。
「250バーツです」といわれれば、「嘘をつけ、もっと安いだろ」と答えるのが世界の常識。日本の常識はむしろ世界の非常識で日本の海外旅行者は外国では「カモ」になっている。なにせ、前回も報じたとおり、例えば、中国LOUIS VUITTONの直営店でLOUIS VUITTONのニセモノが売られているのが海外なのだ。
河合拓氏の新刊、大好評発売中!
「知らなきゃいけないアパレルの話 ユニクロ、ZARA、シーイン新3極時代がくる!」
話題騒然のシーインの強さの秘密を解き明かす!!なぜ多くのアパレルは青色吐息でユニクロだけが盤石の世界一であり続けるのか!?誰も書かなかった不都合な真実と逆転戦略を明かす、新時代の羅針盤!
河合拓のアパレル改造論2024 の新着記事
-
2024/11/12
アパレルは「個人売買」「古着」が、今後驚くほど拡大する理由 -
2024/11/05
ユニクロがZOZOに出店しない当然の理由と今後のECモールとの付き合い方 -
2024/10/29
ライザップ傘下の夢展望、Temu効果で株価高騰も拭えない「不安」とは -
2024/10/22
事業再生、「自ら課題解決する」現場に変えるための“生々しい”ノウハウとは -
2024/10/15
利益5000億円越え!世界で圧巻の強さのユニクロが中国で苦戦する理由とは -
2024/10/08
コンサルの使い方に社長の役割…企業改革でよくある失敗と成功の流儀とは
この連載の一覧はこちら [46記事]
関連記事ランキング
- 2024-10-29ライザップ傘下の夢展望、Temu効果で株価高騰も拭えない「不安」とは
- 2024-11-05ユニクロがZOZOに出店しない当然の理由と今後のECモールとの付き合い方
- 2024-11-12アパレルは「個人売買」「古着」が、今後驚くほど拡大する理由
- 2024-10-22事業再生、「自ら課題解決する」現場に変えるための“生々しい”ノウハウとは
- 2024-11-07同じ低価格なのに…GUがしまむらやワークマンと「競合」しない決定的な理由_過去反響シリーズ
- 2024-09-17ゴールドウイン、脱ザ・ノース・フェイス依存めざす理由と新戦略の評価
- 2021-11-23ついに最終章!ユニクロのプレミアムブランド「+J」とは結局何だったのか?
- 2024-09-27ユニクロが中間価格帯になったことに気づかない茹でガエル産業アパレルの悲劇_過去反響シリーズ
- 2024-10-15利益5000億円越え!世界で圧巻の強さのユニクロが中国で苦戦する理由とは
- 2024-01-02勝ち組はSPAではなく「無在庫型」へ 2024年のアパレル、5つの受け入れ難い真実とは