過去最高益のZOZOにアキレス腱か?利益率低下の意外な理由
物流に関する、「卵が先か、鶏が先か」問題
簡単に言えば、今のZOZOの在庫キャパシティを鑑みて、預かり在庫(資産ではない)がオーバーキャパシティに陥り、そこで発生する在庫オペレーションのコストが増えマイナス要因になったということである。
ならばZOZOに在庫が集まったのであれば、好調に販売できたのではないかと考える人も多いだろう。だが、いかにZOZOでもこの暖冬下での販売はきつく、期初予想を下回った。
実際、ZOZOTOWN事業の実質的な売上成長率ともいえる「商品取扱高の伸び率」は、23年3月期は対前期比11.2%増と高く、24年3月期も期初計画では8%増を見込んだものの、結果は下振れして6.7%増にとどまった。25年3月期の会社計画でも同様6.5%増の成長にとどまる見通しだ。
ここで注目すべき論点は、ある一定量の在庫がZOZOに集まると、オペレーションが付いてこず、収益を圧迫するという事実である。同社は、決算短信内で「物量増に伴う作業効率の低下により、人件費うち物流関連費(対商品取扱高)が0.1ポイント上昇」を販管費率悪化の要因の1つに挙げている。人件費うち物流関連費は、対前期比で20億1000万円増となる190億5600万円となり、商品取扱高に占める割合は3.4%から3.5%へと悪化したというものだ。
これ以外の数字は開示されていないので詳細はわからないが、例えば、同社は25年3月期の商品取扱高(その他商品取扱高を除く)を5722億円 (対前期比6.6%増)と置いているが、このオペレーションのコンプレキシティ(複雑性)は、単なる成長でも起こりえるのではないかというのが、私の老婆心である。
この辺はいっそうの情報開示を期待し、ファーストリテイリングのように事業別やセグメント別の損益計算書(P/L)やバランスシート(B/S)を開示していただきたいと個人的には思う。また、積極的にK-POP、K-FASHION (韓国文化、韓国ファッション)を取り入れるとZOZOは述べており、私はこの領域を2年前から声高に叫んできただけに、大いに期待したいとともに、その成果などもはっきりと開示してほしい。
いずれにしても、ZOZOのビジネスモデルは盤石であるものの、物流の投資と物流費の「卵が先か、鶏が先か」問題は、案外盲点であったかもしれないし、その今後の影響度について注視する必要があるだろう。
物流の高度化は恒常的に続くのか、それとも目指すべき姿があるのかなど、今後の収益に影響を与えるドライバー(値)についての開示は、なおさらである。
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プロフィール
株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。
著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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