違いは「顧客サイド」にあり オムニチャネルとOMOの本質的な違いとは何か?
O2Oがうまくいかない理由とオムニチャネルの誕生

しかし、戦略を立てたがうまくまわらない。その大きな要因は、各店舗のKPIが売上のままだという点にある。これでは、自社の顧客を同じブランドとはいえ他の店舗(EC)にとられることを嫌がるのは当然だ。だから、送客は思った通りに動かなかったのである。
そこでアパレルはKPIを、店舗の売上に加えてオンラインへの送迎も評価に加算できるよう工夫したのである。
そのころだった。Appleが社運をかけて投資を行ったスマートフォン、iPhoneが世界を席巻しはじめた。
最初は、スマホなどまた出ては消えてゆく運命だと考えていた人が多かった気がする。確かに、日本製で云えばシャープ製のZaurus(ザウルス)という小型携帯端末が出ては消えていったし、Windowsを持ち運べるサイズにしたポケットPCも数多くの会社から生まれ、そして、消えていった。
かくいう私自身も、発売開始当初はiPhoneに懐疑的だった。なにより、「あんなに小さなスクリーンで数万円もする服を買い物するようになるはずがない」ということだ。
しかし、2020年の調査では、ECによる購買の60%がスマホになっており、年代が若いほどその傾向が強くなっていたのを見て驚いた。
また、ECは、そもそもチャネルなのか、という素朴な疑問がうまれ、その位置付けも変わった。例えば在庫の有無を店舗に行く前に確認出来る、ほしい服を近い店舗に送り、そこで試着ができるなどなど、EC (電子商取引)ではなく、「顧客体験」を向上させるツールとして活躍することになったのだ。
ここからでてきたのが、「オムニチャネル」である。オムニチャネルは、一方向でのデリバリーしかない「クロスチャネル」と異なり、いつでも、どこでも、どうやってでも、お買い物ができるようにする概念だ。私が、アマゾンの重役を退任してカートサーモンの米国に入社した人物にアマゾンの戦略とともに、オムニチャネルの本質について聞いたとき、得た言葉がそれであった。
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