勝ち方に強さが出る!TOKYO BASEが今後さらに大躍進する明確な理由と2つの課題とは
同社の決算のPros & Cons (良し悪し)は、極めてロジカルに整理できる。
同社は、EC事業は値引き後売上が苦戦したと述べている。例えば、ZOZOのタイムセールとクーポン値引きだ。ZOZOは売上に乗じて手数料をもらうため、テナントに値引きをさせればさせるほど売上が上がる分儲かる仕組みとなっている。たしかにテナント側も売上は上がるのだが、ここには在庫を消化する以外にテナントにメリットはないと私は見ている。利益率が低下するからである。それもあってTOKYO BASEでは、儲かるEC事業をめざして構造改革を進め「昨年10月から始めているタイムセール廃止の継続、25年1月期よりECの値引きクーポン配布の廃止」を明言したのではないだろうか。また、そのことによる売上の低下は、粗利率を高めることで、最終の利益段階の差を相殺すると述べている。
TOKYO BASEの販管費は91億3400万円で、45.7%である。多くの百貨店アパレルが50%台なのに対して同社の45.7%は優秀な部類である(ちなみに、ユニクロは30%台だ)。
ここにもしっかりとした戦略が裏にあり、日本で云えば東名阪、中国で云えば一級都市などへのドミナント化を狙っているため、ブランドを毀損するような店舗は撤退(23年度は14店舗撤退、うち中国が13店舗)している。嗜好品を好んで購買する顧客がいる都市で商売をすることで、TOKYO BASEのブランド価値を維持すると同時に、人員生産性を高めているようだ。実店舗の販売力で、販管費率を40%台におさえ利益体質にしているのはお見事と言わざるをえない。
また、同社の主要顧客である20~30代のさらに上の40~50代を狙った業態「THE TOKYO」も順調に立ち上がっているようだ。「TOKYO」の文字をいれ、TOKYO BASEのイメージ想起をさせ、ユニクロ・無印良品とは異なるファッションポジションで戦っており、「どこかユニクロの真似?」のようなアパレルが多い中、同社との違いをハッキリだしているのにも好感が持てる。かくいう私もTHE TOKYOのヘビーユーザーだ。
25年はニューヨークに出店!
同社は、25年1月期、売上200億円、営業利益16億円を目標に掲げている。売上の200億円はすでに24年1月期にほぼ達成しているので、あとはいかに利益体質にするかという点がポイントになる。
値引きの抑制と都市部へのドミナント出店からわかるのは、同社は「ブランド化」を狙っているということである。さらに、25年1月期のビッグイベントは、ニューヨークのSOHOに70坪級の店を出店することだ。SOHOといえば、北にあがるとハイブランドが多いが、南にいけばストリートカジュアルのブランドが多く、同社は、「やや南」に出店するという。開業は5月の予定だ。
さらに、業界をおどろかせたのは、同社の初任給・最低賃金を30万円から40万円にあげたということである。薄給で有名なアパレル業界において最低賃金が40万円というインパクトは大きい。年収で云えばボーナス込みで500万円を超え、アパレル商社でも30歳ぐらいの賃金に相当する。
同社には「スーパースターセールス」制度があり、年間1億円を売り上げた販売員は年収1000万円の報酬を出すなど、成果を厚遇で報いる仕組みが整備されている。谷CEOは、日本のファッション・リーディング企業として見本を見せると述べる。25年1月期の計画は(米国では当初苦戦もあろうが)ほぼ達成させるだろうと私は思う。このように、同社の経営は極めて分かりやすくロジカルで、他のアパレルと強烈な差別化を見せている。
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