JACDS代表も反対せず…厚労省検討会で露になった登録販売者「不要論」

玉田 慎二(医薬コラムニスト/ジャーナリスト)
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全薬協は機を逸し、JACDS代表は反対せず

 デジタル技術活用の販売に関して、次に議題に上がったのはひとつ会合を挟んだ第6回(7月14日開催)だった。厚労省は遠隔販売のイメージをさらに踏み込んだ「業務フロー」を提示。厚労省が説明を終えると、登販“代表”の全日本医薬品登録販売者協会(全薬協)代表が口火を切った。

 「基本的に、デジタル技術の活用というのは日本における産業構造をどのように変革していけばいいのかという論点のなかで論ずる話で、こんなちっぽけな話ではないように私は思っています。個人としての意見です」。

 大所高所からの見解だった。ただ、登販を代表する“団体屋”の意見としては弱かった。医師会や薬剤師会などなら、自らの職能を狭める可能性のある改正案には烈火のごとく反対する。検討会という場でのパワーゲームでは、自らの権益に関しては、ダイレクトに、明確に、強烈に、自己主張するのが団体屋の任務だからだ。もっとも、全薬協代表が公式の検討会に招聘されるのは、実に久しぶりのことだった。

 もうひとり、登販の存在を“代弁”する立場のJACDS代表が続いて意見を述べた。「協会としては問題点が多く、安全性を担保できないという観点から賛成できない」──と突っぱねて見せた。ところが「しかしながら運用次第では非常に高い効果が得られる」とも付け加え、全面的に反対ではない姿勢を臭わせた。そのうえで「資格者が不在で販売できない時間帯において、この新しい販売方法を実験するというのはいかがか」などと実証試験の実施を提案したのである。

 ドラッグストア業界は登販制度の新設によってこの十数年、出店ラッシュに結び付け大躍進したといっても過言ではない。新規に店舗を開設するための基準要件である専門家として、登販は欠かせない。にもかかわらず、検討会では微妙な言い回しだった。ここに登販アイデンティティの“影”がある。JACDS代表はこの後の検討会議論でも、登販不要論に反対することはなかった。

 そして、全薬協の代表もまた大局的見地からの意見は発するものの、不要論につながる受渡店舗の新設に対して、声高に反対することはなかった。医師会のような我田引水な理屈をこねることもなく、あくまで“スマートな主張”を繰り返した。会合を重ね、報告書の素案となる「たたき台」まで仕上がった9月4日の第8回会合でようやく、「職能団体としては『ああそうですか、賛成します』とは申し上げられない」と反対姿勢を明示したのだが、遅かった。検討会を取り仕切る座長からは「ご意見として承っておく」とあっさり片付けられてしまった。(つづく

●連載「忍び寄る登録販売者『不要論』」
第1回 忍び寄る登録販売者「不要論」 新資格に突き付けられた最大の危機とは

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