栗原憲二・伊勢丹新宿本店長インタビュー 売上V字回復の裏にあった「コミュニティMD」とは

野澤正毅
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顧客の関心事を軸にしたコミュニティMD

アキュートガール
Z世代をターゲットにした「アキュートガール」

――個人客重視のために、具体的には、どのような取り組みを進めてこられたのですか。

栗原 MD(マーチャンダイジング、商品政策のこと)を思い切って転換しました。ご存じのように、これまでの百貨店のMDは、例えば、衣料品、食料品といったカテゴリーがまずあって、さらに、衣料品であれば、婦人服、紳士服、子供服といった具合に、サブカテゴリーに分かれるのが主流でした。しかし、それは商品を軸に、マスを対象としたプロダクトアウト型のMDで、「お客さまの関心事を軸にしたMDではない」と、思い当たったのです。固定客を増やし、来店頻度を高めるCRMとするには、顧客のニーズやウォンツをベースにした、カスタマーイン型のMDにする必要があります。そこで、商品別のくくりを、あえて“破壊”することにしました。

――それは、百貨店のMDにとって、画期的な発想ですね。

栗原 例えば、婦人服の担当になると、レディスのことしか視界に入らなくなり、「メンズのことはよく知らない」というケースが多い。それでは、ビジネスチャンスを逸することになりかねません。ヒントは、外商部門にありました。外商の担当者は、お得意さまに気に入っていただけそうなら、メンズでも、レディスでも商品を持っていきます。そうした発想が必要だと考えました。2020年度には、「タイムレス(新作だけでなくヴィンテージ品などの年代ものも取扱う)、ジェンダーレス、カテゴリーレス」をコンセプトに、テーマなどの横ぐしを刺したMDを担う「コミュニティ営業部門」を発足させました。つまり、お客さまに支持される商品であれば、衣料品でも、食料品でも、「どんな商品を仕入れてもかまわない」という機動部隊、言わば商品部門の「特区」ですね。

――とても興味深い試みです。成功事例はありますか。

栗原 2021年度の取り組みとしては、「アキュートガール」が挙げられます。かわいいモノ、美しいモノを揃えた1週間限定の催事で、これまで当店としては手薄だった「Z世代」をメーンターゲットにしています。トレンドセッターにもアクセスでき、予算比の10%増、約1億円の売上を達成することができ、手ごたえを感じました。これからも、コミュニティMDを強化していきたいと考えています。

 

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