ウォルマートのビジネスモデルは全世界で通用する=西友兼ウォルマートジャパンCEO
世界最大の小売業ウォルマート傘下の西友(東京都)が、じわりと日本市場での存在感を増している。2012年は主要食品1300品目について平均8%値下げ。さらにはグローバル調達網を活用した直輸入品を拡大し、いちだんと低価格攻勢を強めている。ウォルマートは日本市場をどのように攻めるのか。スティーブ・デイカスCEOに聞いた。
日本市場におけるEDLPの浸透に手ごたえ
──2012年は厳しい経済環境の中で、西友は既存店売上高が対前期比0.5%増となりました。第4四半期は客単価が同0.3%増となったものの、客数が同1.8%減少しています。
デイカス 昨年は当社のみならず、どの企業にとっても課題の多い年でした。不況が続く中で各業界が厳しい状況に直面しており、小売業も例外ではありません。しかし、そのような環境の中でも当社は4年連続で増収増益を実現しましたので、それに関しては自信を持っています。
厳しい環境下で一貫して増収増益を記録できた事実が、EDLP(エブリデイ・ロー・プライス)そして当社のビジネスモデルが非常に強固なものだという裏づけになっています。競合他社の実績を見れば、明らかにEDLPとEDLC(エブリデイ・ロー・コスト)が売上高によい影響を与えていることがわかるでしょう。
業績以外にも、昨年は当社として嬉しい展開がありました。1つは新しいプライベートブランド(PB)「みなさまのお墨付き」「きほんのき」の発売です。PB投入の時期としては少し遅かったかも知れませんが、時間をかけてもよい商品を出したかったので、このタイミングとなりました。その結果、他社のPBとは違う独自性を打ち出せたと思います。実際、売上も順調に伸びています。以前あった同様の商品に比べて販売数量ベースでは同20%増、売上高ベースでも同15%伸びています。
また、昨年は当社のネットスーパーを一新しました。リニューアル以後、毎月、対前年比50%程度の売上増を記録しており、予想以上の手ごたえを感じています。出店については、昨年は新店を7店舗開店しました。価格政策では値下げも実施しており、12年は主要食品1300品目について、平均8%値下げしました。
──主要1300品目を対前期比で平均8%値下げしていて、客数が同1.8%減っているのに、客単価が0.3%増えています。ということは、一人当たりの買上点数が平均10%程度伸びているということでしょうか?
デイカス 客単価が上がっているのは、当社をひいきにしてくださるお客さまが、今まで以上に当社でお金を使っているからです。つまり、そのお客さまは、EDLPを理解してファンになってくれています。これは当社のビジネスモデルが機能していることを意味するので、大変満足しています。
客単価もしくは買上点数が増えれば、生産性が向上し、コストが下がって単位売場面積当たりの効率が改善します。それこそが当社のビジネスモデルが成功するためのカギなので、これはとても重要な指標です。
当社が好調に推移していることは、ウォルマートのビジネスモデルが世界中どこでも機能する証拠だと考えています。12年のウォルマートの全世界の売上高は4660億ドル(約36兆8000億円)で、売上増加分だけでも220億ドル(約1兆7600億円)になります。これは多くの日本の小売業の年商を上回る、本当に驚くべき数字です。このような売上が出せるのは、ウォルマートのビジネスモデルが成功しているからです。
現在のような変化の早い時代において、同じモデルを継続するのは大変なことです。目先の動向に合わせて方向性を変えるのは簡単ですが、ここは自制して、ウォルマートのビジネスモデルをやり続けなければいけません。
──客単価は伸びましたが、一方で第4四半期は客数が減っています。最近は都市部に小型スーパーマーケット(SM)が増え、生鮮食品を取り扱うコンビニエンスストア(CVS)も増えています。こうした小型店の影響もありますか?
デイカス お客さまがどこに流れているのかを正確には把握できません。しかし、確かに昨年は全国的に小型フォーマットの店舗が大幅に増えました。その影響がまったくないとは言えません。
ただ、当社には競合店をコントロールすることはできませんから、当社にできることを考え、努力を続けるだけです。お客さまが欲しい物を望む価格で提供する。その結果、客数が伸びればそれが正しいということですし、客数が落ちればもっと努力しなければいけません。当社は今の取り組みを継続することが大事だと考え、EDLPとEDLCをさらに強化し、PB商品の開発に注力します。とくにPB商品はさらに伸びる可能性を秘めていると考えています。