すべて逆張り!?「感動接客」のノジマが仕掛ける、家電不毛地帯への出店戦略の勝算
ネットの利便性より、きめ細かな接客力
物理的にも接客密度が濃くなることで、これまで以上に接客力が重要になる。そこで同社は研修施設の購入を検討するなど、真骨頂の接客力をさらに強化すべく、水面下で人材育成の体制強化も進めている。
「店舗スペースが小型化すれば、店舗スタッフが1、2人ということもある。そうなると一人ひとりがより多くの知識を蓄えておく必要がある。これまで以上に人材育成は重要になる」と、野島社長はよりきめの細かい接客力が、隙間エリアへの出店戦略のカギを握ると力を込める。
昨今は、実店舗とオンラインを有機的につなぎ、販売を最大化するOMO(=Online Merges with Offline、オンラインとオフラインの融合)も浸透しつつある。少数精鋭を補完する戦略としても有効な一手になりうるが、野島社長は「ウチでは基本的に行わない」とあくまでもリアル店舗での接客力で、顧客ニーズと満足度を満たす方針にブレはない。
「変な会社でしょ」と笑う野島社長。だが、ネットで何でも買える環境が整備されたことと引き換えに失われたものもある。商品を選ぶ際の豊富な知識を持つ店員からの情報収集や使い方がわからない時のサポートや故障時の対応などだ。
豊富な品揃えで便利に安く買える。ネットで家電を購入するメリットを集約すればこの3つにだろう。一方、同社で家電を買えば、価格はリーズナブルに、丁寧な接客とアフターフォローが付いてくる。どちらが良いかは、ユーザーの価値観にもよるが、同社の今後の出店戦略では、後者を欲するユーザーが多いエリアがターゲットとなる。
製品購入に「安心」を付加し、差別化
出店強化を図る首都圏の住宅街は高齢化が進んでおり、製品購入に「安心」を求める層も少なくない。かつての街の電気屋さんのように、住民との密なつながりを持って、よりきめ細かくニーズをすくい取ることで、「固定化」にもつながる。
時代の流れに逆行しているようでいて、実は新しい──。常に変化を続け、より良い販売スタイルに磨き上げていく同社だけに、他社の常識や想像を超えることは真骨頂だ。景気は後退基調にあり、世の中は沈みがちだが、だからこそ同社の「感動接客」が、“買い場”として、そのポテンシャルをより発揮する潮流になりつつあるのかもしれない。