アリババの手中に落ちるな!日本企業は中国市場攻略に綿密な戦略が必要な理由
恐るべきタオバオのビジネスモデル 出店料は5%だが…
![Yongyuan Dai/istock](https://diamond-rm.net/wp-content/uploads/2022/08/iStock-471518109.jpg)
日本では、その高額なコミッションフィー(出店料、いわゆる場所代)が批判されているモールだが、中国のタオバオのTモールへの出店費用は、化粧品、アパレル含め売上の5%程度と驚くほど安い。したがって、中国進出する日本企業は、まずはTモール、と飛びつくわけだが、気が遠くなるほど膨大な出店アイテム数の中で存在感を出すためには、モール内部でのPR費用を積む必用がある。これも平均すると売上の10%程度必要になるとのこと。さらに、日本では批判にさらされたモールの値下げセールだったが、これは中国でも同様でモール側の値下げ要求は恒常的に発生し、結果的には売上の20%程度が必要になってくる。
また、タオバオは、広大な中国全土の物流をほぼカバーしている。中国では「ロジスティクス/ネットワーク設計」という、米国ではデジタル技術で解析しているようなハブアンドスポークを組む必要があり、独自進出は不可能だ。狭い島国では交通網が発達し、結果ロジスティクスという概念さえない(知っていても実際に意識することがない)日本人には理解できないことかもしれない。
一方で、中国政府の規制によって中国では使えないサービスを見れば、アリババの狙いは一目瞭然となる。Amazonは競合なので言わずもがな。Google (YouTube)、Meta (Instagram)も不可能で、なぜかMicrosoftやAppleはOKだ。これは、ライブコマースが「顧客データ」のEC送客の最も重要な手法であることを知っているからだ。
私は、以前の論考でこれからのアパレル・ビジネスは等しくD2Cに収斂され、
- ブランド
- ライブコマース
- ビッグデータアナリシス
- 在庫レスマーチャンダイジング
- 個別配送 x 越境物流
の5つの機能を連携したShein(シーイン)の逆モデルの覇者が、世界標準のD2Cを実現できると説いた。この②のライブコマースと⑤の物流をアリババグループ一択となっており、結果的に、タオバオに集まる数万というテナントのおかげで、③のビッグデータアナリシスを行っているのである。
YouTube、Instagramという、日本では20代女子の実に80%がファッション情報の仕入元となっているソーシャルメディア活用ができないのである。その背景には、同国が自国データの国外流出を強烈に締め付けている事実、さらに、同国では、ticktock、タオバオライブコマースなど、自社グループ内でのソーシャルメディアを用意し、アリババグループ内へ誘引する戦略でも明らかだ。中国でECを拡大することは、すなわち、アリババグループの軍門に降る以外の選択肢はないことになる。
河合拓氏の新刊がいよいよ9月に発売決定!
「知らなきゃいけないアパレルの話」
アパレルはSDGsに殺される!なぜ多くのアパレルは青色吐息でユニクロだけが盤石の世界一であり続けるのか!?誰も書かなかった不都合な真実と逆転戦略を明かす、新時代の羅針盤!
書籍の予約は:『知らなきゃいけないアパレルの話』まで
3刷突破!河合拓氏の書籍
「生き残るアパレル 死ぬアパレル」好評発売中!購入は下記リンクから。
河合拓のアパレル改造論2022 の新着記事
-
2023/01/24
「大ディスカウント時代が到来」 この意味が分からないアパレルの未来は悲観的な理由 -
2023/01/17
H&MやZARA等が原価下回る価格で取引を強要 SDGs時代にこんなことが起こる必然の理由 -
2023/01/10
ビッグデータを制する企業が勝利する理由と、M&Aできない企業が淘汰される事情 -
2022/12/27
2023年のアパレル大予測 外資による買収加速・DX失敗・中国企業に完敗、が起こる理由 -
2022/12/20
中国企業傘下の仏メゾン「ランバン」米国で上場 いまや中国企業に追いつけない理由 -
2022/12/13
過去のヒットからAIが予測し売れる服を自動生成!?アパレル業界の課題とこれからとは
この連載の一覧はこちら [55記事]
![河合拓のアパレル改造論2022](https://diamond-rm.imgix.net/wp-content/uploads/2022/01/kawai_2022_main.jpg?auto=format%2Ccompress&ixlib=php-3.3.0&s=e9dc3f80edc0322e9898e59423e5b4dc)
関連記事ランキング
- 2024-06-25「パリコレ」にアパレル業界人が行かなくなった理由
- 2024-06-11日本人の服がこの10年で「ペラペラ」になった本当の理由
- 2024-06-19インバウンドで最高益続出!日本人が知らない「百貨店の価値」とは
- 2024-07-02日本人が大好きな衣料品セール 安く買うのが難しくなる理由とは
- 2024-06-04定番はユニクロ、ファッション品はシーイン…どうなる日本のアパレル
- 2024-07-09あなたの会社も要注意!「善意の行動」が仕組みを破壊するメカニズム
- 2023-01-06SHEIN TOKYO「売らない店」現地レポート!担当者が明かす、低価格3つの理由とは
- 2024-07-12値下げ率大きいユニクロと値下げ率小さいしまむら どちらが高収益?
- 2024-06-24業態別 主要店舗月次実績=2024年5月度
- 2024-06-20店舗回帰で変貌!OMOが帰着する「ローカルロジスティクス」とは