コロナでビジネス環境激変!コンビニ大手3社の“新たな成長源”とは

大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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日用・衣料品に薬も!あらゆるニーズに応える

 直近のCVSの動きで特筆したい点はそれだけではない。新しい生活様式への対応も急ピッチで進めている。たとえば、コロナ禍で高まるワンストップショッピングニーズに応えるべく、セブン-イレブンは青果や100円ショップ「ダイソー」の商品を、ファミリーマートは衣料品のプライベートブランド(PB)シリーズの売場を拡大するほか、22年5月には処方薬を送料・手数料無料で、最短翌日には受け取れるサービスを、東京都内の約2400店で開始している。

 来店動機の創出にもこれまで以上に注力している。コロナ禍で人の行動が制限されるなか、CVSは立地の利便性だけでは利用を獲得するのが難しくなっており、「店に行きたくなる理由」を提供する必要が生じているためだ。たとえばセブン-イレブンは今年1月から「北海道フェア」「アジアングルメフェア」などの企画を毎月実施。その結果、3月・4月は既存店平均日販が前期はもちろん、コロナ前の20年2月期の実績も上回る効果が出ているという。

 本特集では、日本最大級のスマートフォン位置情報データプラットフォームを有するunerry(ウネリー:東京都/内山英俊社長)の協力を得て、コロナ禍でCVSの利用者がどのように変化しているのかを調査した。結果、外出自粛により自宅近くの決まったCVSを利用するようになる傾向があり、それが一定割合、定着していること、またコロナ禍が主婦や若い世代などこれまでメーン利用者ではなかった新しい層がCVSを利用し始めるきっかけになっていることがわかった。これらの層に継続して「店に行きたくなる理由」を提供できれば、コロナ禍はCVSにとって新しい客層を取り込む契機になるのかもしれない。

 地域対応をいっそう進めている点にも注目したい。たとえばローソンは23年2月期からエリアカンパニー制を採用。各エリアの営業・商品・店舗開発組織を移管することで、消費者により近い現場で意思決定を行い、地域に密着した事業運営を図る。すでに22年3月には北海道と近畿エリアで同制度を始動した。

 地域に密着した店舗運営では北海道を地盤に約1200店を展開するセコマ(赤尾洋昭社長)は、地元の食材や味にこだわった商品開発で22年4月まで22カ月連続で既存店売上が前年同月を超える好調ぶりを見せている。このことから、地域対応強化にはCVSの伸びしろがあると考えられそうだ。

 これらの動きから言えるのは、CVSが店舗網を生かした新規ビジネスや、新しい品揃えや提案により、商圏内のあらゆるニーズを深掘りしようとしていることだ。コロナ禍では食品スーパーやディスカウントストアなどの業態が特需に沸く一方でCVSは厳しい逆風を受けるかたちとなった。しかし忘れてはならいないのが、CVSはこれまでも変化対応によって新しい需要を切り開き、成長を続けてきた業態であることだ。次なる施策を一気に加速させている今、商圏内でどのような存在感を発揮してくるのか、あらためて注目するべき存在といえる。

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記事執筆者

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。

最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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