過去最高益のトリドールHDが打ち出す、中長期経営計画の全貌

崔 順踊(リテールライター)
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トリドールHDの中長期経営計画

 トリドールHDでは、名実共にグローバルフードカンパニーになることをめざし、今期を初年度とする新中長期経営計画を発表している。中長期経営計画では、22年3月期を初年度とする3か年計画を経て、毎年見直しを行い、最終年度とする28年3月期に「連結5500店舗超」「売上高3000億円」「事業利益率12%以上」「営業利益率10%程度」の達成をめざす。

最初の3か年計画の最終年度である25年3月期には現状の1.5倍の店舗数である2500店舗、売上高は1.4倍の2200億円、営業利益は120億円を計画している。営業利益は22年3月期の補助金を除いた値で見ると8.7倍という強気な目標設定だ。

これらの目標達成に向け、トリドールHDでは出店、改装、M&A(合併・買収)など大規模な投資も計画する。今後は成長性、収益性に加え、効率性と健全性も経営指標として加え、ROEは25年3月期に10%以上、28年3月期には12%以上を見込む。

“二律両立”と感動体験によって拡大をめざす

 トリドールHDでは、中長期経営計画の中で “二律両立”こそ、同社の強みの源泉であると定義している。この“二律両立”とは「手間暇かけてこだわって展開することをスピーディに効率的に展開する」「そこでしかできない体験を世界中どこでもできる体験にする」という、本来であれば“二律背反”となる活動を両立し、拡大することである。

 そして基本戦略として、前述の“二律両立”および、同社の経営の根幹にある「食の感動体験」によって来店動機を生み出し、予測不能な水準で成長し、事業を世界中に広げるという「KANDOトレードオン戦略」を打ち出す。「感動体験があれば、必ず需要の開拓、顧客創造ができ、食の感動体験を世界で共有・推進したい」という想いが込められている。

 成長戦略の基点・価値観である感動体験を体現するブランド群を指す「ダイバースブランド」が、世界各地の特別な知識・ノウハウ・ネットワークを持つ現地パートナー「ローカルバディ」とともに、世界中で多様な業態によって網目状に張り巡らされた「ノーボーダーネットワーク」を構築し、世界各地で同時に出店していく。これらを戦略の主体である「感動進化ドライバーズ」を中心に展開するという枠組みだ。

 具体的な戦略は4つの重点テーマと11の取組みによって構成される。重点テーマの1つ目は中食、ハラル、ヴィ―ガンなど新たな食文化やシーンでの感動体験を創出し続ける「感動体験の追求」、2つ目は国内外のバラエティ豊かなブランド群を活かし、よりバランスの取れた成長をめざす「事業ポートフォリオの量・質拡充」

 3つ目は各地のパートナーを第二のヘッドクオーターと位置づけ、強力なパートナーシップのもと各地で複数業態を同時並行的に進める「バディ布陣の確立」、加えて世界的な「グローバルアドバイザリー」を迎え事業推進力を一層高めていく。4つ目は本社機能が縦横無尽に世界各地でネットワークとして機能し、事業の急展開を実現する「N×N(ノーボーダーネットワーク)展開を支える基盤構築」である。

 これら重点テーマごとに「麺職人」など「人材の育成と定着化」、「ブランドインキュベーション」、「グループ機能のグローバル化」など11の取組みを定義し、グローバルマーケットでの飛躍をめざす考えだ。

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