原価高騰が理由ではない!サイゼリヤが全メニューを見直す理由と布石
新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大下での生活の長期化、原材料価格の高騰などにより、多くの企業が業績不振に陥っている外食業界。そうしたなかイタリアンレストランチェーン「サイゼリヤ」を展開するサイゼリヤ(埼玉県/堀埜一成社長)は、製造直販の強みを生かすほか、果敢に新フォーマット開発にも挑戦し、ピンチをむしろ好機に変えようとしている。直近の取り組みについて堀埜社長に聞いた。
アフリカ豚熱の危機も製造直販の強みで乗り切る
──コロナ禍は3年目に突入しました。「サイゼリヤ」の現在の利用動向をお話しください。
堀埜 まん延防止等重点措置(以下、まん延防止)が適用されると、売上は適用前比で80数%に減少します。1月に適用が始まった直近のまん延防止でもそうでした。しかし、営業時間の短縮や酒類の提供休止などを勘案すると、実質的な利用動向は適用前と変わらないといえます。
サイゼリヤはコロナ収束後も閉店時間を22時とし深夜営業を取りやめる方針です。恐らく売上を6%ほど失うことになりますが、代わりに生産性が上がり、利益率は向上するはずです。
営業時間を短縮してから、固定費の見方が変わりました。売上の増減にかかわらず発生する固定費の中には、営業時間の増減によって変動する費用があります。営業時間を短縮したことで、それら費用を数億円削減できました。またコロナ感染拡大以降、開店前と閉店後の作業時間の短縮に取り組んできました。その成果は表れてきています。
──原油や原材料の価格が高騰しています。
堀埜 原油価格の上昇が製造コストや輸送コストに跳ね返るのにはタイムラグがありますから、今後さらに数%は原材料価格が上昇するとみています。それでも単純な値上げはしたくありません。コストを削減し価格を維持するつもりです。
それ以上に頭を痛めているのが、イタリアで発生したアフリカ豚熱です。1月からイタリア産のハム類が一切輸入できなくなり、国内の在庫でやり繰りしている状況です。他国のハム類に切り替えると料理の味が変わってしまいますから、簡単に置き換えられません。長引くことが予想されますので、すべてのメニューを見直しているところです。
春のグランドメニューの改定でも「柔らか青豆の温サラダ」に使用していたパンチェッタをペコリーノチーズに代えるなど、変更を加えました。一方で、ラインアップの少ない魚介類のメニューを強化したいと考えています。
少しイタリアの食材に偏り過ぎていたと反省しています。世界人口が100億人を超えるとされる30年後には、イタリア食材に頼れなくなるかもしれません。数十年後を見据えて、何を食材にすることが安定的な商品提供につながるかを考えながらメニュー開発を進めていきます。
──ピンチが新しい商品を生み出すきっかけになっています。
堀埜