円安と株安が「アパレルビジネス」に一切関係ない理由
円安でもアパレル企業が生きていける理由
私が長々と為替の話をしたのは、円安だろうが円高だろうが、ビジネスはやりようがあるということを知ってもらうためだ。確かに、国内に一極集中し海外販売がほとんどない日本のアパレルにとって、円高のほうが製造コストも安くなって儲かり、円安になれば原料高とデフレで日本のアパレルは持たなくなると考えるだろうし、実際、株価もそのように反応している。だが、それは大きな間違いだ。
実は、アジアの日本向けに縫製や編立てをしている工場の多くは、日本で生き残れなくなった企業がアジアへ出て行って、現地で合弁事業を打ち立て、日本向けに仕事をしているということを知る人は少ない。「日本のアパレル投入の98%は海外生産」という言葉だけが一人歩きしているが、実は、その98%の多くは日系企業、あるいは日本資本が何らかの形で入っている。それほど、日本人はたくましいのである。
今回言いたかったのは、以下の2点である。
- 円高、円安という言葉は相対的なものであり、実際、全く同じ状況の30年前は、今の円安は円高で、株安は株高だった。メディア報道で一喜一憂する必要はない。為替は動くものだ。これで、円高になったら、今度は輸出ができないといってワーワー騒ぎ出すだろう
- したがって、円が上がっても下がっても、日本人は海外で生きてゆけるし、繊維産業の川上といわれる領域は、実際、中国や東南アジア、バングラデッシュまで自力で出て行き、ビジネスをやっている。アパレル企業は、お尻に火がついていないからグズグズいっているだけで、お尻に火がつけば、海外でたくましくビジネスをやれる(すくなくとも私たちの先輩はやってきた)し、やれないところは消えて行く
である。アパレル不況と叫んでいるうちはまだ余裕がある。為替や株価(投資家として)に一喜一憂する暇があれば、世界のデジタル化の潮流をまずは経営者が学ぶべきだ。
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プロフィール
河合 拓(経営コンサルタント)
ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
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