意外な大手が上位に!コロナ禍で時価総額を増やした小売企業、減らした小売企業ランキング
2019年実績を越えている企業のポイントとは
次に、2019年超えを達成している企業を俯瞰しながら、筆者なりにポイントを洗い出してみたいと思います。
まず、Eコマースプラットフォーマーにおいては、カテゴリートップの座にあること、新規顧客の獲得が無理なく進んでいること、既存顧客のライフタイムバリュー最大化のためユーザー経験の最適化に向けた投資に積極的であること、既存顧客あたり利益最大化のために品揃え強化・提案機能の最適化・広告などの副収入の確保にぬかりがないことが鍵になりそうです(これらのポイントは実店舗小売業にもそのまま当てはまる基本的な内容ですが)。ZOZO、MonotaROは概ねこれらを充足しているからこそ、連続増益基調が続いているのだと思います。
次に、いわゆるSPA企業ですが、①国内でSPAの事業モデルが確立され洗練されていること、②そのSPAモデルを調達元である川上と販路である川下のいずれにおいても海外展開し外需を成長エンジンとして取り込んでいること、そして③顧客接点から商品開発およびサプライチェーン管理までデジタル化によって一気通貫する体制づくりが進んでいることがポイントになるでしょう。筆者はファーストリテイリングが一歩進んでいると考えていますが、ニトリホールディングスも同じ方向に舵を切っていると見ています。ファーストリテイリングは以前から自社を「情報製造小売業」と標榜してきましたが、ニトリホールディングスも「製造物流IT小売業」を標榜していることが、ポストSPAの方向性を示唆していると考えます。ニトリホールディングスの大きな課題は海外事業のプレゼンスアップにありそうです。
なお、増加リストにセブン&アイ・
また、下落リストに載った良品計画も上記のポストSPA路線を歩んでおり、チェーンストアオペレーションから個店主義への転換についての不透明感が払拭されれば評価が持ちなおす可能性があると思います。
他の下落リストの企業を眺めると、PBよりもナショナルブランド主力の企業が多いと思います。取り組むべき本質的な課題はSPAと変わらないはずですが、付け加える点があるとすれば、店舗のスクラップ&ビルド、商品構成の見直しになるでしょう。ナショナルブランド抜きでは運営が難しいのであれば、業界集約を進めて規模を高め利益率を確保する動きにつながらざるをえなくなるのではないでしょうか。
コロナ禍の体験は少子高齢化社会の「予行演習」
振り返れば、コロナ禍の体験は、
1年間、大変お世話になりました。
読者の皆様にとって2022年がさらに素晴らしい年になることを心よりお祈り申し上げます。
プロフィール
椎名則夫(しいな・のりお)
都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。
米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師
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