アングル:経営破綻のシルク・ドゥ・ソレイユ、復活へ歩み着々

ロイター
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浙江省杭州で練習をするシルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマー
新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るう中、カナダの著名サーカス劇団シルク・ドゥ・ソレイユ・エンターテインメント・グループはわずか48時間で世界各地での興行の大半が停止、経営破綻に追い込まれた。写真は浙江省杭州で練習をするパフォーマー。8日撮影(2020年 ロイター/Aly Song)

[モントリオール/杭州(中国) 16日 ロイター] – 新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るう中、カナダの著名サーカス劇団シルク・ドゥ・ソレイユ・エンターテインメント・グループはわずか48時間で世界各地での興行の大半が停止、経営破綻に追い込まれた。

アクロバット、ジャグリング、火吹きなどの曲芸師やミュージシャンが繰り広げる豪華なショーによって世界的名声を得た同グループは、中国、イタリア、米国その他諸国で上演中止を余儀なくされた。

6月末にカナダで破産法の適用を申請した後、今月に債権者との間で資産購入合意を締結、合意は7月18日に同国裁判所に提出される予定だ。

「ある日突然、実質48時間でショーも収入も消えてしまう経験をするとは、これまでの人生で思ってもみなかった」。ダニエル・ラマール最高経営責任者(CEO)はロイターにこう語る。

「あの国で上演中止、この国でも中止という知らせが1時間ごとに入るのだから、本当に辛かった」

ラマール氏は、中止になった海外公演からメンバーが帰国する手助けや、1公演当たりトラック50台分の装備を保管する倉庫の確保に奔走することになった。ラマール氏は2001年、空中パフォーマンスの人材をスカウトする幹部としてシルクに入った。

新型コロナ感染症が世界的に大流行する前、シルクは世界で44演目を回しており、年間収入は約10億ドル(約1070億円)に上った。ショーは水中パフォーマンスから、歌手のマイケル・ジャクソン、ビートルズ、サッカーのリオネル・メッシ選手をテーマとする演目まで多彩だ。

しかし公演のキャンセルに伴い、シルクは従業員の95%を恒久的、あるいは一時的に解雇するに至った。

シルクのコンサルタントを務めるクリス・ガッティ氏は「私のフェイスブックは悲しみで埋め尽くされた」と言う。ガッティ氏はかつて、空中のバーの上で演じるパフォーマーだった。

非公開企業のシルクはチケット売り上げを開示していないが、裁判所書類によると、15億ドル近くの負債を抱えている。

中国公演のパフォーマー、ヘー・グオウェイ氏は、1月に新型コロナによって公演が中止されてから、自宅でジャグリングの練習に励んだ。

「中国公演が中止と知ったとき、私たちはフラストレーションを抱えた。感染症がどれほど深刻になるかも分からないため、恐怖も感じた」と当時を振り返る。

発足以来最大の危機

シルク・ドゥ・ソレイユは1980年代初め、カナダ・ケベック州の大道芸人が設立したサーカス一座として発足し、世界的な娯楽企業へと躍進を遂げた。新型コロナ危機は、発足以来で最大の脅威だ。

ショーには動物もスターも出てこないが、一部の主要パフォーマーは高収入を得て、共同創業者のギー・ラリベルテ氏はフォーブス誌のカナダ富豪リストに名前がある。

米ネバダ州ラスベガスとフロリダ州オーランドの常設公演は、秋の再開を視野に入れている。だがラマールCEOは、公演数と収入・利益が危機前の水準に戻るのは2023年になると予想している。

「平時に戻る、つまりワクチンか治療薬ができて人々が劇場を安全だと感じられるようになるまでには、1年から1年半を要すると考えている。その時点から数年中に、当社は前の状態に戻れるだろう」

中国公演は先月再開、メキシコでも7月初めに再開しており、回復の兆しは見られる。

中国杭州市にいるヘー・グオウェイ氏は、当地のマスク姿の観客から、コロナ前にも増して熱い気持ちが寄せられているのを実感する。

「再び舞台に立った時、昨年8月の初回公演の時とほとんど同じ気持ちを味わった。この間の努力は無駄ではなかった」