車や徒歩じゃない?京都・嵐山の飲食店、来店手段はまさかの!でも100年続く人気の理由とは

森本 守人 (サテライトスコープ代表)
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嵐山とは思えないリーズナブルな価格

 入店したのは、大正8年創業の「琴ヶ瀬茶屋」。西暦だと1919年、今年で103年目を迎えた老舗だ。

 このお店、保津川下りの船(観光船)に対し、同じく船で近づき、軽食や飲料、酒を水上販売するのが本業である。観光船の船頭さんからは「船上コンビニ」と親しまれている。一方、私が訪れたのは川岸にある常設店で、貸しボート向けの売店としても機能している。

 案内された座敷でメニューを見ると、「おでん 」「下足の天ぷら 」(各500円)、「川魚の天ぷら」( 1000円)はじめ、どの料理も嵐山とは思えないリーズナブルな価格。まず私は「イカ焼き」( 400円)と「瓶ビール 中瓶 」(500円)を注文した。

「イカ焼き 400円」と「瓶ビール 中瓶 500円」を注文する。嵐山の飲食店とは思えないリーズナブルな価格

 料理とお酒を待つ間、後ろに手をつきリラックスした体勢で反対側の岸をぼんやりと眺めていた。自分はあそこからやって来たんだと考えると、達成感が湧き上がってくる。ふとこちら側の岸に目を向けると、貸しボート向けの販売コーナーで軽食を求めるカップル、家族連れの姿があった。当たり前だが、皆、ボートで“来店”している。

 イカ焼きとビールが到着。コップに注ぎ、ゴクリとやる。OH!ワンダフル。休日はこういう過ごし方もアリだと思ったね。

 追加で「焼きそば 」(500円)、「鍋焼きうどん 」(600円)も頼む。知人と一緒に来ており、料理をシェアしたのだ。さらに「チューハイレモン 」(300円)なども。

 食べながら観察していると、次から次へとボートでお客がやってくる。男女のペアだけでなく、サラリーマンらしきスーツ姿の男性2人連れもいる。共通するのは、皆、笑顔である点。やはり、食事の前にボートを漕ぐという体験をするというのが、楽しさの演出に大きな効果を与えるスパイスとなっているのだろう。

席からは元来た向こう側の岸が見える。自分はあそこからやって来たんだという達成感が湧き上がる

 なおこのお店、期間限定の営業で年内は12月中旬までなので注意が必要だ。コロナ禍の状況によっては休業することもあり、利用の際は事前に電話確認するのが安全かも知れない。

 一般に、飲食店はアクセスしやすい場所にある方がありがたい。その意味では、わざわざ手漕ぎボートで行く必要がある琴ヶ瀬茶屋は最悪である。それでも長く愛されてきたというのもわかるような気がする。いつからこのボートシステムを取り入れたのかは知らないが。

実は、「嵐山」駅からは渡月橋をそのまま渡って陸伝いで来ることもできる。これはその入口

 最後にネタばらしになるが、実は、「嵐山」駅からは渡月橋をそのまま渡って陸伝いで来ることもできる。とはいえボートを漕いで飲食するのが絶対に面白く、オススメだ。

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記事執筆者

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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