時価総額とは?企業の価値は株価ではない?時価総額から何がわかるのか徹底解説!

読み方:じかそうがく
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時価総額とは

時価総額とは、1株当たりの株価に発行済み株式総数を乗じた金額を意味する。また、将来のフリーキャッシュフロー(企業が本業で稼ぐお金)に基づいて、算出することもできる。

時価総額のイメージ
時価総額とは、1株当たりの株価に発行済み株式総数を乗じた金額を意味する。 i-stock/F3al2

株価だけで企業の実力はわからない

 株価は企業の市場価値を測るバロメーターだが、株価だけを比べても意味はない。比較すべきは時価総額だ。

 たとえばトヨタ自動車(愛知県)の株価は9838円(2021年8月6日終値)なのに対し、任天堂(京都府)は5万2410円だ。では、任天堂の市場価値はトヨタ自動車の5倍以上かといえばそうはならないという印象ではないだろうか。
今度は時価総額で比較してみよう。

  • トヨタ自動車の時価総額=株価9838円×発行済株式32.6億株=32.1兆円
  • 任天堂の時価総額=株価52410円×発行済株式1.3億株=6.9兆円

トヨタ自動車の時価総額は任天堂の4倍以上、つまり投資家はトヨタの市場価値を任天堂の4倍以上と評価しているわけだ。そして、時価総額には企業の成長性や収益力など「稼ぐ力」が反映される。「稼げる企業」ほど、高い時価総額で評価されるといえる。

時価総額で見劣りする日本企業

 バブル経済真っ只中の平成元年、時価総額世界ランキングのトップ5はすべて日本企業(NTT・日本興業銀行・住友銀行・富士銀行・第一勧業銀行)が独占し、上位50社中32社が日本企業だった。

 それから30年以上がたち、現在の上位5社はアップル、アルファベット、マイクロソフト、アマゾン、サウジアラムコだ。日本企業は1社も入っていない。トヨタ自動車が35位にようやく顔を出す。50社中35社はアメリカ企業が占め、GAFAと呼ばれる巨大IT企業の存在感が目立つ。中国企業も、テンセント・アリババなど5社がランキングしている。

 この30年間、グローバル化の波に乗った企業の時価総額は膨らみ続けてきた。平成元年トップのNTT時価総額は1600億ドルだが、2021年トップのアップル時価総額2.3兆ドルだ。30年間で15倍近くに増加したわけだ。世界の時価総額争いで、日本は出遅れた印象が否めない。

時価総額経営のメリット

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時価総額経営のメリットは、株価上昇による株主への利益還元にある。

 時価総額経営のメリットは、株価上昇による株主への利益還元にある。時価総額経営とは、時価総額増加、つまり株価上昇を最優先する経営手法だ。本業を伸ばすだけが選択肢ではなく、不採算事業の譲渡・企業買収・ファンドへの投資によっても、フリーキャッシュフローは膨らみ株価は上昇する。

 この30年間で、ニューヨークダウ株価は10倍を超えて上昇した。恩恵は、家計に跳ね返る。1995年間から2015年の20年間でアメリカ人家計の平均金融資産は3.11倍、そのうち2.32倍は株価上昇メリットだとされている。

時価総額経営のデメリット

 時価総額経営のデメリットは、財務リスクの懸念増加である。コロナ禍前、航空機メーカー・ボーイングは、株価上昇をねらって自社株買い・配当に巨額キャッシュを投じた。結果として、自己資本比率が0%近くに落ちたところを新型コロナが襲った。ボーイングは政府救済を受けて難を逃れたが、投資家の間では「自業自得」との声も囁かれる。

時価総額経営の実例

 時価総額経営の実例として、ソフトバンクグループ(東京都)の取り組みを取り上げる。

 時価総額ランキングで、ソフトバンクはトヨタ自動車を急激に追い上げている。2016年末にはトヨタが3倍近くの差をつけていたのが、21年4月には1.3倍にまで差が縮んでいる。

 ソフトバンクグループの本業である通信事業が、トヨタの自動車ビジネスに匹敵すると評価されているから時価総額が高いわけではない。ソフトバンクグループは、孫正義氏が主導するビジョン・ファンドをはじめとする投資事業を主な収益源としている。

 21年3月期に純利益5兆円を叩き出せたのも、投資事業の含み益によるものだ。ウーバーテクノロジーズをはじめとする投資先の評価が、世界的なカネ余りもあって跳ね上がったのだ。一方で、含み益に頼った経営には不安定さがつきまとう。20%前後とされる自己資本比率の低さを含め、今後の懸念材料だ。

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