「デジタル化と小売業の未来」#9 日本で外資系スーパーマーケットの撤退が相次ぐなか、コストコが生き残った理由

望月 智之 (株式会社いつも 取締役副社長)
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日本の住環境では大量のまとめ買いができない

  この圧倒的な差を生んでいる大きな理由の1つが、日本の住環境にあります。アメリカでは住宅面積の広さから冷蔵庫が複数ある家庭が多いほか、冷蔵庫とは別に大きな冷凍庫を所有している家庭もあります。そのため、冷凍食品を大量に買い溜めしていることが一般的です。

 一方、日本の住宅はアメリカほど広くはありません。カニや肉、魚などお徳用のビッグサイズ商品は、欲しいと思っても冷凍庫に入る絶対量が少ないため、物理的に購入可能な個数に制限があります。限られたスペースに収納できるぶんだけを購入するのであれば、わざわざ郊外店舗に行かなくてもネットで簡単に購入できるため、まとめ買いを前提とした外資系の小売店舗はどうしても苦戦を強いられるのです。

コストコは日本で「イベント的に遊びに行くエンターテインメントの場所」として定着した
コストコは日本で「イベント的に遊びに行くエンターテインメントの場所」として定着した(写真は日本国内店舗の売場)

 アメリカのように、日常的に商品を買いに行く場所としてコストコを利用する人は日本では多くはないでしょう。しかし、ほかの外資系SMが撤退していくなか、日本でもコストコは生き残ることができています。その理由は、コストコが「イベント的に遊びに行くエンターテインメントの場所」として定着したからです。

 

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記事執筆者

望月 智之 / 株式会社いつも 取締役副社長
1977年生まれ。株式会社いつも 取締役副社長。東証1部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつもを共同創業。同社はD2C・ECコンサルティング会社として、数多くのメーカー企業にデジタルマーケティング支援を提供している。自らはデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの専門家として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。

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